日本には様々な独立系投資信託が存在していますが最も歴史がふるいものが「さわかみ投信」です。
さわかみ投信は澤上篤人氏によって1996年に設立されました。彼はパナソニック退職後に以下の経歴を辿りました。
- スイス・キャピタルインターナショナル(ファンドアドバイザー)
- 山一證券(ファンドアドバイザー)
- ピクテ銀行(日本代表)
パナソニック後は金融の専門家として歩んできたことになります。現在は息子の澤上龍氏が社長を勤めています。
さわかみ投信は「さわかみファンド」1999年から運用を開始し、現在純資産額は3000億円という規模に成長しています。
上記をご覧になっていただければわかると思いますが、何度も暴落を繰り返しながら徐々に基準価格を上げてきてはいます。
本日は「さわかみファンド」は投資をする魅力がある投資信託なのかという点についてお伝えしていきたいと思います。
さわかみファンドの特徴とは?
では、まずさわかみファンドの特徴について見ていきたいと思います。
ファンドマネージャーは草刈貴弘氏
ファンドマネージャーは澤上篤人氏でも澤上龍氏ではありません。草刈貴弘氏です。
皆さんこう思われたことと思います。イケメンだと。
それもそのはず、彼は芸能プロダクション出身で舞台俳優を行なっていたのです。元々金融の専門家ではなく、道を諦めて「さわかみ投信」に入社して研鑽しファンドマネージャーになったのです。
草刈氏は01年に大学の建築学科を卒業後、在学時から所属する芸能プロダクションで舞台俳優の道を歩み始めた。25歳でその道をあきらめ、就職活動の厳しさも味わいながら住宅ローン販売会社に入社。数カ月後にさわかみファンドのセミナーに参加したことが大きな転機となる。一般的な投資セミナーなら「うちのファンドを買えという話になるが、将来の子供や孫、社会に還元するために頑張れと言われ、衝撃的だった」とファンド創業者との出会いを振り返る。カリスマの存在に引かれて08年にさわかみ投信へ入社、業務管理部門を担当しながら投資をゼロから学び、アナリストを経て10年11月にファンドマネジャーになった。
参照:Bloomberg
彼が2013人にファンドマネージャーに就任以来方針を大幅に転換しました。
- 350銘柄近くあった保有銘柄を100銘柄に厳選
- 1銘柄あたりの投資金額を増額
- 時価総額5000億円以下の企業に発行済株式に対する保有比率を1%以上とする
- ITや海外企業も投資対象とする
筆者としてはやはりファンドマネージャーは競争が厳しい金融業界でキャリアを培ってきた方に担当してほしいところではあります。
投資手法は長期バリュー株投資
「さわかみ投信」の投資方針はバリュー株投資です。
運用にあたっては、経済の大きなうねりをとらえて先取り投資することを基本とし、その時点で 最も割安と考えられる投資対象に資産を集中配分します。その投資対象資産の中で、将来価値か ら考えて市場価値が割安と考えられる銘柄に選別投資し、割安が解消するまで持続保有する「バ イ ・ アンド ・ ホールド型」の長期投資を基本とします。
参照:交付目論見書
バリュー株投資は手法は様々ではありますが、超長期のリターンとしてはグロース株投資を上回る成績を出しています。
→ バリュー株投資とグロース株投資はどっちがおすすめ?あらゆるデータから両者を徹底比較する
ただ、実態はバリュー株投資とはいえない内容になっています。
さわかみファンドの構成上位銘柄
以下はさわかみファンドの構成上位20銘柄です。(2022年2月末時点)
上位20銘柄で全体の55%を占めています。
銘柄 | 組入比率 | 時価総額 | PER | ROE |
日本電産 | 7.06% | 8兆5000億円 | 79.2 | 6.2% |
ダイキン工業 | 5.19% | 6兆8000億円 | 48.4 | 12.0% |
信越化学工業 | 4.36% | 8兆1000億円 | 28.4倍 | 12.3% |
浜松ホトニクス | 3.83% | 1兆1000億円 | 59.7倍 | 7.9% |
テルモ | 3.81% | 3兆2000億円 | 46.1倍 | 11.7% |
TOTO | 3.56% | 1兆1000億円 | 58.1倍 | 7.0% |
花王 | 3.49% | 3兆7000億円 | 27.6倍 | 17.6% |
ブリヂストン | 2.86% | 2兆9000億円 | - | 12.5% |
トヨタ自動車 | 2.64% | 25兆000億円 | 15.1倍 | 10.5% |
三浦工業 | 2.43% | 8000億円 | 62.6倍 | 10.6% |
デンソー | 2.13% | 4兆8000億円 | 62.3倍 | 1.9% |
ディスコ | 2.06% | 1兆3000億円 | - | 12.4% |
朝日インテック | 1.95% | 9000億円 | 98.6倍 | 13.3% |
キッコーマン | 1.56% | 1兆5000億円 | 54.2倍 | 9.9% |
HOYA | 1.51% | 5兆1000億円 | - | 18.0% |
セブン&アイ | 1.43% | 3兆5000億円 | 24.1倍 | 8.5% |
本田技研 | 1.43% | 5兆2000億円 | 12.6倍 | 5.6% |
旭化成 | 1.34% | 1兆6000億円 | 18.3倍 | 7.6% |
日東電工 | 1.32% | 1兆5000億円 | 26.9倍 | 6.8% |
国際石油開発 | 1.24% | 9000億円 | - | 5.5% |
参照:運用報告書
上記ご覧いただければわかる通りPER水準は非常に高く、どちらかというとグロース株投資的側面が大きい構成銘柄になっています。
トップの日本電産は永守氏が運営する世界トップの総合モーターメーカーです。業績は基本的に堅調に推移しています。以下は日本電産の業績推移です。
コロナショックで一時的に落ち込んでいますが堅調に推移していますね。
結果としてPERは80倍近い水準にはなっていますが、期待の高さから株価も堅調に推移していました。
ただ、流石に直近マザーズが40%以上下落する過程でパリュエーションが高い日本電産は売り込まれています。
さわかみファンドの手数料
さわかみ投信の手数料形態は以下の通りとなっています。
購入手数料:無し
信託手数料:1.1%(税込)
水準としては「ひふみ投信」と同じですね。
「さわかみファンド」の運用実績とは?
肝心の「さわかみファンド」の運用実績について確認していきましょう。
さわかみファンド単体の運用実績
最初にお伝えした「さわかみファンド」のチャートをご覧ください。現在は運用開始から3倍の基準価額にまで成長しています。
ただ、リーマンショックやチャイナショック、今回のコロナショックのような市場の暴落局面で大きく基準価額を下げています。
価格の変動幅は非常に大きいのがデメリットとなっています。
以下では価格変動幅が大きくない銘柄で高いリターンを出している銘柄をまとめていますので参考にしていただければと思います。
さわかみファンドのリターンを日経平均と比較
「さわかみファンド」と日経平均のリターンの比較が以下です。さわかみファンドは日経平均に劣った成績となっています。
青:さわかみファンド
赤:日経平均
更に上記の日経平均は配当金を加味しない値です。
実際は更に日経平均の方が高いリターンとなっているのです。
また、殆ど動きは日経平均と連動した動きとなっています。大型株にばかり投資をしているので必定といえばそれまでですが。
「ひふみ投信」や「ジェイリバイブ」を比較
ではその他の高い成績を残しているファンドと比較してみましょう。
以下は過去10年の比較となっています。
青:さわかみ投信
赤:ひふみ投信
緑:ジェイリバイブ
過去10年でみると圧倒的に「さわかみ投信」が低いリターンとなってしまっていますね。一方、過去3年のリターンは以下となります。
青:さわかみ投信
赤:ひふみ投信
緑:ジェイリバイブ
殆ど変わらないレベルですね。注目すべきは過去3年だと3ファンドとも日経平均に劣った成績になっているのです。
「ひふみ投信」や「ジェイリバイブ」は元々は素晴らしい成績を残しているのですが、資金が流入してファンドの規模が大きくなると凡庸な成績となってしまうのです。
まとめ
「さわかみファンド」は1999年から運用されている最古参の独立系投資信託です。今回のポイントは以下となります。
- ファンドマネージャーは舞台役者出身で元来金融の専門家ではない
- バリュー株投資を謳うも、実際はグロース株投資
- 成績は凡庸な結果となっており、度々暴落に見舞われている
あえて「さわかみファンド」に大切な資金をまかせる妙味はないと筆者は考えます。