数ある独立系投資信託の中の一つにコモンズ投信があります。コモンズ投信は「コモンズ30ファンド」と「ザ・2020ビジョンファンド」の二つを運営しています。
本日はその中でも旗艦ファンドであるコモンズ30ファンドについてお伝えしていきたいと思います。
今回はわかりやすく「ひふみ投信」を証券会社経由で購入することができる「ひふみプラス」と比較しながら「コモンズ30ファンド」を検証していきます。
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「コモンズ30ファンド」の特徴とは?
まずは「コモンズ30ファンド」の特徴についてお伝えしていきたいと思います。
「30年」「30社」への投資をモットーにしている
まずコモンズ30ファンドの30という数字に興味を持たれた方は多いのではないでしょうか?
この30という数値はコモンズ30ファンドの二つの特徴を説明しています。
- 投資の目線は30年
- 原則として投資対象は30銘柄程度
長期投資を志しているということですね。一つの銘柄に30年間投資するという意味ではなく、30年という超長期目線で運用をしていくということですね。また、原則投資対象は30銘柄となります。投資信託の中では非常に少ない銘柄に厳選しています。
日経平均が225銘柄であることを考えると、厳選度合いがわかりますね。
ファンドマネージャーは伊井哲郎氏
アクティブファンドにとって誰がファンドマネージャーかということは非常に重要になってきます。
もはや最も重要な部分であるといっても過言ではありません。コモンズ30ファンドの最高運用責任者は「伊井哲郎氏」となっています。
簡単な経歴は以下の通りとなっています。
山一證券で営業企画部に約10年間在籍し、マーケティングなど担当。その後、機関投資家向け債券営業。メリルリンチ日本証券、三菱UFJメリルリンチPB証券で法人・個人向け営業を約10年。コモンズ投信創業と共に現職。2012年7月からCIO兼務。
経歴をみると分かると思いますが、運用者としての経験は乏しく営業としてキャリアを歩んできたことが分かります。
運用者としての実力は定かではありません。
コモンズ30ファンドの組入銘柄
コモンズ30ファンドの厳選30銘柄の中の上位10銘柄は以下となります。
2024年1月末時点での構成上位銘柄は以下となっています。
銘柄 | 未来コンセプト | 組入比率 |
味の素 | ウェルネス | 4.70% |
ディスコ | 精密テクノロジー | 4.60% |
東京エレクトロン | 精密テクノロジー | 4.10% |
三菱商事 | 資源・エネルギー | 4.00% |
信越化学 | 新素材 | 3.90% |
日立製作所 | 社会インフラ | 3.70% |
丸紅 | 資源・エネルギー | 3.70% |
ユニ・チャーム | ライフサイクル | 3.70% |
任天堂 | 生活ソリューション | 3.50% |
コマツ | 地球開発 | 3.50% |
誰もが知る企業である首位の味の素はここ1年の株価が好調で、首位に躍り出ました。
2位のディスコの株価の値動きは以下となります。ディスコは、半導体や電子デバイス製造のための精密加工装置を開発・製造する日本企業です。
主力製品は、ウエハー切断装置や研磨装置などの製造ラインで使用され、微細加工技術に優れています。これらの装置は、半導体製造工程での高精度な加工を実現し、製品の品質向上や生産性の向上に貢献しています。
世界中の半導体メーカーや電子機器メーカーに供給され、革新的な技術と信頼性の高さで業界をリードしています。
特に2023年からは生成AIバブルによって半導体需要が急増していることからディスコも株価が急騰しています。
遡って2022年4月からの推移は以下の通りとなっていました。顔ぶれは大きくはかわっていないですね。株価の上下動によって順位には変動はあります。
2024年1月 | 2023年10月 | 2023年6月 | 2022年4月 |
味の素 | ディスコ | 丸紅 | KADOKAWA |
ディスコ | 三菱商事 | 三菱商事 | 丸紅 |
東京エレクトロン | 味の素 | 味の素 | 三菱商事 |
三菱商事 | 信越化学 | ディスコ | 東京エレクトロン |
信越化学 | 丸紅 | 信越化学工業 | SMC |
日立製作所 | KADOKAWA | KADOKAWA | 味の素 |
丸紅 | 日立製作所 | 東京エレクトロン | ディスコ |
ユニ・チャーム | ユヌチャーム | デンソー | デンソー |
任天堂 | 東京エレクトロン | コマツ | 信越化学工業 |
コマツ | デンソー | 日立製作所 | ホンダ |
PERは低めの銘柄が多くどちらかというとバリュー株という性格が強いですね。
手数料は比較的低い
コモンズ投信は販売手数料はないノーロード型の投資信託です。
毎年発生する信託手数料は年率1.078%(税込)とアクティブ型の投資信託の中では低い水準になっています。
コラム:コモンズ投信の赤字の噂とは?
少し運用については休憩です。
記事のタイトルにコモンズ投信の赤字が噂であると書いていますが、これはコモンズ投信の運用の話ではなく経営状況について心配する声が多かったようです。
コモンズ投信の貸借対照表を見ると、利益剰余金が2021年時点ではマイナスになっていました。
コモンズ投信の収益は基本的に投信の手数料になるはずで、アクティブ投信なので人件費、調査費用などが最初はどうしてもかかってしまうものです。
赤字であってもキャッシュフローが問題なければ会社は存続できます。
そして現在2022年時点では利益剰余金は黒字化しており、経営に特に問題は内容に見受けられます。
比較対象である「ひふみプラス」の特徴とは?
「ひふみプラス」の特徴との違いをみていきましょう。「ひふみプラス」は証券会社で購入できる「ひふむ投信」です。成績は本家の「ひふみ投信」と全く変わりません。
「ひふみプラス」は成長株投資で長期投資を標榜しており手数料が低い点は共通しています。しかし、大きく違うのは構成銘柄数です。
【不調のひふみ投信】やめたほうがいい?まだ上がる?直近の運用成績がひどいと評判の「ひふみプラス」の時代は終わった?今後の見通しと共に徹底評価!
コモンズ30ファンドは構成銘柄は30銘柄ですが「ひふみプラス」は198銘柄と多くの銘柄に投資しています。では肝心な成績はどうなっているのでしょうか?次の項目で比較していきたいと思います。
コモンズ30ファンドのリターンを「ひふみプラス」と比較しながら検証
ではコモンズ30ファンドのリターンについてみていきましょう。
コモンズ30ファンドのリターン
以下はコモンズ30ファンドの設定された2009年1月以降のリターンです。ちょうどリーマンショック後の上昇相場から運用開始となっています。
まさに最高のタイミングで投資を始めたという感じです。
もう少しわかりやすく直近数年のリターンは以下となります。2022年は大きくマイナスでした。今年は円安の追い風もあり上昇中ですが、ドル建てで考えるとそこまで上昇していないのが実態なのですよね。2018年に17%程度利益を吐き出しており、2022年にも吐き出してしまっているので、複利効果という点では今ひとつ伸びが足りません。
1-3月期 | 4-6月期 | 7-9月期 | 10-12月期 | 1-12月期 | |
---|---|---|---|---|---|
2023年 | 11.28% | 15.78% | -3.39% | 4.35% | 29.88% |
2022年 | -3.35% | -7.61% | -0.14% | 1.52% | -9.47% |
2021年 | 9.93% | 3.35% | 3.59% | -0.05% | 17.64% |
2020年 | -15.50% | 13.84% | 7.24% | 12.00% | 15.54% |
2019年 | 7.15% | -0.88% | 3.06% | 8.92% | 19.23% |
2018年 | -2.09% | 1.14% | 4.67% | -19.84% | -16.92% |
また、コモンズ30ファンドは分配金を拠出しています。2017年から2021年に合計で1910円分、全体の約6%程度を拠出していることになります。
そのため、分配金再投資前提でチャート(黄緑色)の方が高くなっています。しかし、この分配金込基準価格には注意すべき点があります。株価の下落が始まった2022年からは分配金は出していません。
下落耐性の強いファンドといえばヘッジファンドであり、複利効果を最大限まで発揮したいという方はこちらも参考にしてみてください。
【2024年2月更新】日本国内優良ヘッジファンド(&投資信託)のおすすめ運用先をランキングで紹介!
分配金込基準価格は税金を控除されない前提で算出
先ほどのチャートは分配金(税引前)を分配時にファンドへ再投資した前提で考えたチャートとなります。つまり、配当金を出さずに運用した場合の成績と考えていただく必要があります。
一度配当金を拠出すると20.315%の税金が発生します。つまり、再投資する場合には拠出された分配金の79.685%しか再投資できないのです。
つまり、仮に分配金拠出後に再投資するとすると、下記の緑色と黄緑色の真ん中の成績になるということになりますね。
過去10年の「ひふみプラス」や「日経平均株価」と比較
では「コモンズ30ファンド」と「ひふみプラス」と「日経平均」のリターンの比較は以下です。
青:コモンズ30ファンド
緑:ひふみプラス
赤:日経平均株価
コモンズ30ファンドと日経平均は殆ど同じ成績になっています。
どちらも分配金を拠出した後のチャートとなっていますが日経平均は毎年2%程度は配当金を出しているので最終成績はさらに日経平均の方が高くなります。
「ひふみプラス」が圧倒的なリターンをだしていますが、直近の成績でみると別の結果が出てきます。
過去3年の「ひふみプラス」や「日経平均株価」と比較
過去3年の「ひふみプラス」や「日経平均株価」との比較は以下となります。
青:コモンズ30ファンド
緑:ひふみプラス
赤:日経平均株価
3年間で見ると、ひふみ投信が最下位に転じます。ひふみプラスは以前は藤野英人氏は超小型株投資で大きなリターンを上げていました。
人気がでたことによって大型株投資中心のポートフォリオとなりリターンは日経平均と同等の成績になっているのです。
以下で詳しくまとめていますので参考にしていただければと思います。
→ 幾度の暴落を経験した「ひふみ投信」の時代は終わった!?評判のアクティブ投信の近年の不調の原因と見通しを徹底評価!
コモンズはわずかに日経平均を上回っています。しかし、日経平均は配当金拠出後のリターンなので、それを加味するとほとんど同じといえます。
その他の独立系投資信託についても纏めていますので参考にしていただければと思います。
掲示板やTwitterでのコモンズ投信の口コミ評判
近年、ていたらくな「ひふみ投信」の成績を受けて「ひふみ投信」は解約したがコモンズ投信の積み立ては続けているというコメントがみられます。
Yahoo掲示板
ここは10年くらい積み立ててきました。基本的なファンドの姿勢に共感したから。最近は分配金が出ることも多く、だいぶ貯まってきました。分配金も入れればindexファンド程度よりちょと上かな? まあ、ずっと持ち続けます。
ひふみも積み立ててきましたが、昨年の1月頃に一部の株も加えて、全部売りました。 3月の暴落時には買いたかった優良株とReitを買い集め、結果、リーマン以来の楽しいウハウハでした。
投信はトキメキが乏しい。 老いても現物の売り買いで頭脳を使うのも悪い趣味ではないですね。
他にも以下のようなコメントがありました。
Yahoo掲示板
このファンドに組み入れられている銘柄に関してですが、
楽天グループでも楽天モバイルで不祥事
今度はKADOKAWAで不祥事
前者は財政面で、後者は企業イメージに関して大ダメージでしょう。
たしかにKADOKAWAの会長が贈収賄で逮捕されていましたね。
ただ株価自体は耐えています。が、リターンも地味ということもあり、Twitterでもあまり話題にされていることはありませんでした。
渋沢栄一の子孫が運営していることが話題に上がっているくらいでしょうか。
景気が悪いと、渋沢栄一へ注目が集まる。栄一はサステナビリティの先駆者だった――。渋沢家五代目子孫で、コモンズ投信会長の渋澤健氏と、中国古典研究家の守屋淳氏が、渋沢栄一の魅力を語る。 https://t.co/YIPPGn6UnE
— 日経BOOKプラス (@nikkeipub) October 5, 2022
まとめ
今回のポイントを纏めると以下となります。
- コモンズ30ファンドは長期投資目線で30銘柄に厳選投資
- 投資銘柄はグロース投資的な側面が強い
- ひふみプラスに比べて銘柄の数を絞っているのが大きな差異
- 過去3年でみても10年でみても日経平均とそこまで大差がない
指数に対してプラスのリターンを狙うアクティブ型の投資信託としては物足りない成績ですね。
暴落を回避しながらコモンズ投信より高いリターンを安定的に出しているファンドについては以下で詳しくお伝えしています。