日本の投資信託(含むETF)分析

人気が高く評判の「楽天日本株4.3倍ブル」や「楽天日本株3.8倍ベア」を徹底評価!レバレッジ型投資信託のリスクをわかりやすく解説する。

2022年5月16日

値動きにレバレッジをかけるレバレッジ投資信託は二種類存在しています。

ブルファンドは対象指数が上昇すれば上昇し、ベアファンドは対象指数が下落すれば上昇する形態のファンドとなっています。

 

楽天証券は様々なブルベアファンドをだしていますが、なかでも人気なのが「楽天日本株4.3倍ブル」と「楽天日本株3.8倍ベア」です。

 

楽天日本株4.3倍ブルは筆者が見ている限り常に買い付け金額上位に名を連ねています。2022年7月18日時点の買付ランキングですが、第6位にランクインとなっています。

場合によっては1位になっていることもあり、人気の高さが伺える投資信託です。

 

順位 ファンド名 委託会社 基準価額(前日比) 純資産(億円) 積立 100円投資 再投資 アセットタイプ
1 eMAXISSlim米国株式(S&P500) 三菱UFJ国際 18,476円 13022.57 海外株式
2 楽天・全米株式インデックス・ファンド 楽天 18,972円 6040.18 海外株式
3 eMAXISSlim全世界株式(オール・カントリー) 三菱UFJ国際 16,158円 5784.62 海外株式
4 楽天・全世界株式インデックス・ファンド 楽天 15,717円 1852.21 海外株式
5 楽天日本株3.8倍ベアII 楽天 7,386円 38.55 その他
6 楽天日本株4.3倍ブル 楽天 9,820円 498.5 その他
7 たわらノーロード 先進国株式 AMOne 20,582円 1994.16 海外株式

 

反対方向の楽天日本株3.8倍ベアも5位となっています。現在は下落相場だからですね。

他の人気投信が長期投資に適しているインデックス型であることを鑑みると、一つだけ異色の投資信託となっています。

 

果たして、楽天日本株4.3倍ブルはレバレッジ型投資信託の本質を理解して投資しているのか筆者としては疑問です。

レバレッジ型投資信託は保有しているだけで日々価値が減価していく仕組みで組成されています。

 

本日はレバレッジ型投資信託の潜むリスクについてお伝えした上で楽天日本株4.3倍ブルについて成績を中心に評価していきたいと思います。

レバレッジ型投資信託に投資を考えている型は是非とも理解いただきたい内容となりますので最後までご覧いただければと思います。

 

レバレッジ型投資信託の特徴とリスクとは?

ではレバレッジ型投信についてまず紐解いていきたいと思います。

 

日々の値動きにレバレッジをかけるレバレッジ型投資信託

おそらく皆さんが勘違いされていることがあります。例えば日経平均の値動きに対して2倍のレバレッジをかけたダブルブルがあるとします。

 

1ヶ月で日経平均が10%上昇した場合、当然ダブルブルは20%上昇すると考えられた方が多いと思います。

しかし、残念ながら必ずしもレバレッジを掛けた分上昇するとは限らないのです。

 

レバレッジ型の投資信託は日々の値動きに対してレバレッジをかける設計となっています。そのため、ある期間を設定してみると必ずしも、レバレッジ倍に変化しているとは限らないのです。

この特徴によって発生する事象について次の項目から詳しく見ていきたいと思います。

 

ブル型投信の上昇相場での上昇率はレバレッジを上回る

相場が上昇局面ではレバレッジ型投資信託の方向が当たっていれば大きな利益を得ることができます。

以下のように現在から指数が毎日前日比10%で上昇しつづけるとします。するとダブルブルは毎日前日比20%で上昇しつづけます。

 

すると、5日後に指数は61%上昇しています。一方、ダブルブルは148.8%と指数に対する上昇幅は2.4倍以上となります。

 

指数上昇率
前日比
指数価格 ダブルブル
上昇率
前日比
ダブルブル
価格
現在 - 100.0 - 100.0
1日後 +10% 110.0 +20% 120.0
2日後 +10% 121.0 +20% 144.0
3日後 +10% 133.1 +20% 172.8
4日後 +10% 146.4 +20% 207.4
5日後 +10% 161.1 +20% 248.8
最終上昇率
累積
+61% +148.8%

 

指数関数的に上昇していくので差が大きくなるわけですね。つまり上昇相場で方向感さえあっていれば、大きな利益を狙うことができるのです。

 

相場下落局面では損失幅はレバレッジほどは広がらない

一方、自分の読みが外れて相場が下落した場合はどうなるでしょうか。さっきとは反対に指数が毎日10%ずつ下落する状況を考えます。

指数上昇率 指数価格 ダブルブル
上昇率
ダブルブル価格
現在 - 100.0 - 100.0
1日後 ▲10% 90.0 ▲20% 80.0
2日後 ▲10% 81.0 ▲20% 64.0
3日後 ▲10% 72.9 ▲20% 51.2
4日後 ▲10% 65.6 ▲20% 41.0
5日後 ▲10% 59.0 ▲20% 32.8
最終上昇率
累積
▲41% ▲67.2%

 

5日後に指数は41%下落します。しかし、ダブルブルは82%下落するわけではありません。

67%下落するに留まるのです。

 

対象指数が横ばいの時にレバレッジ型投信は減価する

ここまできくと、上昇時は大きく値幅が取れて、下落時は損失を抑えられる良い商品であると考えられた方もいらっしゃると思います。

しかし、大きな落とし穴があります。

 

それは、相場がよこよこの展開が続くときにレバレッジ型投資信託は価格が下落していくという性質があります。

 

相場の多くの局面は横ばいの展開が続きます。つまり長期間でみるとレバレッジ型投資信託は着実に価格が下落していくのです。

例として指数が上下を繰り返して5日後に元の価格に戻ってくるケースを考えて見ましょう。

 

指数上昇率 指数価格 ダブルブル
上昇率
ダブルブル価格
現在 - 100.0 - 100.0
1日後 10% 110.0 20% 120.0
2日後 -18% 90.0 -36% 76.4
3日後 22% 110.0 44% 110.3
4日後 -18% 90.0 -36% 70.2
5日後 11% 100.0 22% 85.8
最終上昇率
累積
0% -14.2%

 

最終的に指数は何も変わらないにも関わらず、ダブルブルは14.2%ものマイナスを被ってしまっています。

 

上記は指数は「100→110→90→110→90→100」と変化していきました。では反対に「100→90→110→90→110→100」と変化した場合はどうでしょうか?

 

以下を同様にご覧ください。

 

指数上昇率 指数価格 ダブルブル
上昇率
ダブルブル価格
現在 - 100.0 - 100.0
1日後 -10% 90.0 -20% 80.0
2日後 22% 110.0 44% 115.6
3日後 -18% 90.0 -36% 73.5
4日後 22% 110.0 44% 106.2
5日後 -9% 100.0 -18% 86.9
最終上昇率
累積
0% -13.1%

 

指数は変わらないにも関わらず、ダブルブルは-13.1%となってしまっています。

相場が静かな時は徐々にレバレッジ型投資信託は減価していってしまうのです。

 

楽天日本株4.3倍ブルの特徴とは?

レバレッジ型投資信託に潜む罠についてお伝えしたところで、本題の楽天日本株4.3倍ブルについてお伝えしていきたいと思います。

 

先物取引を活用してレバレッジを出している

楽天日本株4.3倍ブルでは先物取引を活用してレバレッジを出しています。

楽天日本株4.3倍ブルのレバレッジを出す仕組み

株価指数先物取引*を活用し、日々の基準価額の値動きが、わが国の株式市場全体の日々の値動き(日々の騰落率)の概ね4.3倍程度となることを目指して運用を行います。参照:楽天日本株4.3倍ブル日本株

 

どの株価指数を使用しているかは名言されていませんでしたが、運用報告書を確認すると「日経平均先物」を使用しています。

つまり日経平均に対してレバレッジをかけているということが出来そうですね。

 

簡単に組成できるにも関わらず手数料水準は高い

ただ先物を購入しているだけなので、調査に労力がかかるわけではありません。そのため、手数料水準もインデックス型の投資信託と同様の水準でしかるべきです。

しかし、残念ながら楽天日本株4.3倍ブルの手数料水準はアクティブ型投資信託と同等の水準となっています。

 

販売手数料:3.3%(税込)
信託手数料:年率1.243%(税込)

 

インデックス型投信(=パッシブ)とアクティブ型投資信託はどっちがおすすめ?成績や手数料を中心に金融庁データをもとに徹底比較!

 

楽天日本株3.8倍ベアの特徴とは?

楽天日本株3.8倍ベアは日経平均先物を売り建てることでレバレッジをかける投資信託です。

楽天日本株4.3倍ブルが買い持ちだったのと反対ということですね。

楽天日本株3.8倍ベアの仕組み

手数料も全く一緒となっています。ただ先物を売り建てているだけなのに高い手数料水準ですね。

 

楽天日本株4.3倍ブルと楽天日本株3.8倍ベアの成績

それでは楽天日本株4.3倍ブルと楽天日本株3.8倍ベアのリターンを日経平均と比較しながら分析していきたいと思います。

 

過去1年の実績は楽天日本株4.3倍ブルは高いパフォーマンスだがレバレッジ分は増えていない

まず楽天日本株3.8倍ブルが運用開始した期間で比較したものが以下となります。

楽天日本株3.8倍ベアは下落しすぎて償還してから、あらたに運用開始していますが再び基準価額は地に落ちています。

 

青:楽天日本株4.3倍ブル
緑:楽天日本株3.8倍ベア
黄:楽天日本株3.8倍ベアII
赤:日経平均

 

日経平均と楽天日本株4.3倍ブルと楽天日本株3.8倍ベアのチャートを比較

 

楽天日本株4.3倍ブルは直近大きく上昇していますが2023年の3月までは日経平均に劣後する成績となってしまっていました。

 

楽天日本株4.3倍ブルが設定された2015年10月以降の成績を日経平均と比較

では楽天日本株4.3倍ブルが設定された2015年10月からの日経平均との比較を見てみましょう。

青:楽天日本株4.3倍ブル
赤:日経平均

2015年10月以降の日経平均と楽天日本株4.3倍ブルの比較

2015年10月以降の日経平均と楽天日本株4.3倍ブルの比較

 

 

日経平均は+150%のリターンをあげていますが、楽天日本株4.3倍ブルは約7倍になっています。

ただ、殆どのリターンは2023年にだされたものでした。上げ相場では非常につよいのですが停滞相場だと減価していきます。

2023年までは苦しい期間が長く、正直言って投資する局面によっては値動きに耐えられず損切りしてしまった人が多いことと想定されます。

 

レバレッジ商品を購入する是非

筆者は海外でも生活し、多くの富裕層と運用について会話をしてきた過去があります。

そして、運用で成功している人ほど、レバレッジ商品には手を出さない、そもそも興味がないという特徴がありました。冒頭で楽天ブル、ベアの売買代金がトップ10に入ってくるこの日本の運用知識の低さは目に余るほどです。

 

そもそも資産運用とはレバレッジでリスクを取って短期でお金を増やすことではありません。それは投資ではなく投機です。無学な投資家が欲望のままに資金を突っ込む今の日本の状況は末期に近く、このムーブメントは新興国で起こるものと同様です。

実際に悪いのは投資家ではなく、このような価値のない金融商品を大々的にマーケティングし、個人投資家を損させ、手数料を儲けている証券会社です。

レバレッジ投信は楽天に限らず、どこの証券会社でも取り扱っています。ナスダックをレバレッジするような商品も流行になっていますが、本気で資産を増やそうと思うのであればまず手を出すことがない商品です。

 

遊びで博打をするのであれば良いのですが、堅実な投資家として、資産を築き上げたいと考えている方は楽天ブル・ベアなどの無価値な商品に手を出すようなことはやめてください。まだ知識のない投資家から資金を奪うような、無価値な商品だと思います。

 

 

まとめ

今回のポイントを纏めると以下となります。

  • レバレッジ型投資信託は横ばい相場の時に減価する
  • レバレッジ型投資信託は先物取引を利用してレバレッジをかけている
  • 先物取引をしているだけなのに手数料水準はアクティブ型投信なみに高い
  • 長期間でみるとレバレッジ型投資信託のリターンは沈み込む
  • 活用するならピンポイントでの投資に限定した方が良い

 

安定した資産形成を目指すのにおすすめのファンドについては以下でお伝えしていますので参考にしていただければと思います。

締め括り

 

堅実複利運用

おすすめ投資先ランキング

長期で資産を着実に育てる

 

資産運用で資産を増やす方法は様々あります。効率を求めるのであれば、株式投資が最良の選択肢であることは疑いようのない事実です。

過去の歴史を見ると、それは火を見るより明らかです。「市場が伸びるところ」が最も効率よいです。苦労なく成果を挙げられます。

 

各資産の超長期リターン

 

しかし、株式投資も医者になるくらい勉強をしなければ勝てません。であれば、我々は早々にリスクの高い個別株投資という選択肢は捨てるべきです。

そして、投資のプロが運用する「ファンド」(投資信託、ETF、ヘッジファンド)を選ぶべきなのです。

ここでファンド選びが最も大切です。長年、筆者も資産運用を実施してきました。

 

結局は絶対にマイナスになる年を作らない、小さい利回りでも良いのでしっかりプラスを出す、それを長年続けるファンド。このようなファンドを活用することがベストプラクティスであり、正しい資産運用です。資産が強烈に伸びていきます。

 

上記の条件を主眼に置きながら、筆者のポートフォリオを構成するファンドを中心にランキング記事を作成してみましたので参考にしてみてください。

 

堅実複利運用

おすすめ投資先ランキング

長期で資産を着実に育てる

 

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