日本株に投資している様々なアクティブ投資信託が存在していますが、なかなかインデックスに対してプラスのリターンを出せているファンドはありません。
➡︎ インデックス型投信(=パッシブ)とアクティブ型投資信託はどっちがおすすめ?成績や手数料を中心に金融庁データをもとに徹底比較!
しかし、その中でも運用開始以来高いパフォーマンスを出しているファンドも存在しています。今回紹介する東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープンもその1つです。
それでは、東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープンの運用の特徴とパフォーマンスについて詳しくお伝えしていきたいと思います。
投信撤退の話もあった東京海上の商品、ジャパン・オーナーズ株式オープンの特徴とは?
ではまず東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープンの特徴についてお伝えしていきたいと思います。
オーナー企業に投資することが最大の特徴
東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープンは経営者が実質的に主要な株主であるオーナー企業を主要投資対象とするファンドです。
経営者が実質的に主要な株主である企業とは、経営者およびその親族、資産管理会社等の合計持株 比率(実質持株比率)が5%以上である企業とします。
参照:東京海上
オーナー企業に投資をすることで以下の2つのメリットがあるとしています。
- 長期的な株主利益の追求
- 迅速な意志決定
筆者も自分で会社を経営していて身を以て実感しているのですが、会社の利益の追求のために粉骨砕身することに苦痛を全く感じません。
利益が伸びれば、自分の資産が増加しますからね。
オーナー企業の場合は企業の経営者と株主の利害が一致するのです。
さらに、大株主が経営者であれ意志決定が早いのも魅力的です。絶えず変化する環境に即座に対応してくれるのです。
実際、役員等の合計持ち株比率が5%以上である企業の営業利益水準の推移は以下のとおり、東証一部上場企業の利益を上回り続けています。
投資先は中小型企業が多くを占める
オーナー企業が多いので当然中小型株の構成比率が高くなります。
以下は2023年7月末時点の市場別・規模別資産構成になります。小型株が2.4%となっています。
市場 | 比率 |
プライム市場 | 94.20% |
スタンダード市場 | 1.00% |
グロース市場 | 2.40% |
その他 | - |
以下は2020年10月時点の構成比ですが、この頃は中型株、小型株の比率は大きく、大型株はなんと10%を下回っていました。保守的な運用に切り替えたことがよくわかりますね。
東証 1部 | 大型株 | 9.5% |
中型株 | 47.2% | |
小型株 | 35.5% | |
東証二部・マザーズ | 4.0% | |
JASDAQ | 2.0% |
東証一部は2196銘柄上場企業が存在しますが、大型中型小型のくくりは以下の通りとなっています。
- 大型︓TOPIX 100 (時価総額・流動性の高い100銘柄)
- 中型︓TOPIX Mid 400 (TOPIX 100に次いで時価総額・流動性の高い400銘柄)
- 小型︓TOPIX Small (上記以外)
構成上位組み入れ10銘柄(株価不調な銘柄も多数)
以下は最新の2023年7月末時点での構成上位銘柄です。
以下は構成上位銘柄の推移となります。結構、銘柄を入れ替えているのがわかりますね。
2023年7月 | 2023年4月 | 2022年12月 | 2022年9月 | 2022年4月 | 2021年3月 | |
1 | シスメックス | シスメックス | シスメックス | コーセー | エアトリ | リゾートトラスト |
2 | ニデック | 大塚商会 | エフピコ | ロート製薬 | SBSホールディングス | パーク24 |
3 | SBSホールディングス | SBSホールディングス | 光通信 | シスメックス | 朝日インテック | アウトソーシング |
4 | コナミグループ | SMC | SBSホールディングス | SBSホールディングス | セガサミーホールディングス | 日本電産 |
5 | パン・パシフィック | パンパシフィック | パンパシフィック | 光通信 | ユー・エス・エス | ポーラ・オルビス |
6 | DMG森精機 | エフピコ | シップヘルスケア | ラウンドワン | リゾートトラスト | エアトリ |
7 | ソフトバンクグループ | サイバーエージェント | ロート製薬 | 大塚商会 | ソフトバンクグループ | イズミ |
8 | カナモト | DMG森精機 | 大塚商会 | 日本電産 | ファーストリテイリング | フジシール |
9 | エフピコ | コナミグループ | SMC | パン・パシフィック | カシオ計算機 | ユー・エス・エス |
10 | サイバーエージェント | ロート製薬 | カシオ計算機 | ブシロード | パーク24 | SBSホールディングス |
首位のシスメックスの業績推移は以下となります。
売上高 | 営業利益 | 純利益 | |
2007/03 | 101,041 | 12,714 | 9,008 |
2008/03 | 110,724 | 15,033 | 9,131 |
2009/03 | 111,842 | 15,134 | 8,013 |
2010/03 | 116,174 | 15,708 | 9,764 |
2011/03 | 124,694 | 18,288 | 11,411 |
2012/03 | 134,743 | 19,205 | 12,007 |
2013/03 | 145,577 | 21,804 | 14,165 |
2014/03 | 184,538 | 32,870 | 20,573 |
2015/03 | 221,376 | 44,411 | 26,638 |
2016/03 I | 252,622 | 60,729 | 39,278 |
2017/03 I | 249,899 | 51,701 | 40,636 |
2018/03 I | 281,935 | 59,078 | 39,222 |
2019/03 I | 293,506 | 61,282 | 41,224 |
2020/03 I | 301,980 | 55,284 | 34,883 |
2021/03 I | 305,073 | 51,792 | 33,142 |
2022/03 I | 363,780 | 67,416 | 44,093 |
2023/03 I | 410,502 | 73,679 | 45,784 |
2024/03予 I | 460,000 | 83,000 | 52,000 |
非常に強いですね。ただ株価は直近は軟調な推移となっています。
直近はバリュエーションが高い銘柄が非常にペインとなっています。
➡︎ PERとPBRとROEとは?株式投資の重要な指標の見方や目安をわかりやすく解説する!
高い手数料
東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープンはアクティブ型の投資信託です。そのため手数料は基本的には高くなっているんですが、その中でも高い水準となっています。
購入手数料:3.3%(税込)
信託手数料:年率1.584%(税込)
重要なのはパフォーマンスですので、次項で詳しく見ていきたいと思います。
(速報ベース)ジャパンオーナーズの堅調な運用成績
それではジャパンオーナーズのリターンについてお伝えしていきたいと思います。
運用成績
東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープンは以下の通り2013年4月の運用開始以降の運用実績です。
税引前分配金再投資後だと8年間で5倍近くになっています。
実際には配当金を出した時点で20.315%の税金が自動的に支払わされますので、4倍を大きく下回るリターンに収束します。複利効果が失われますからね。
以下はジャパンオーナーズのデータです。過去1年はマイナスに転じており下落耐性に不安が残ります。やはり下落相場には強くないですね。2020年、2021年はバブル相場でした。
1-3月期 | 4-6月期 | 7-9月期 | 10-12月期 | 1-12月期 | |
2023年 | 6.61% | 8.38% | - | - | - |
2022年 | -8.64% | -4.57% | 3.69% | -2.62% | -11.97% |
2021年 | 10.81% | -1.70% | 5.50% | -8.02% | 5.70% |
2020年 | -19.79% | 26.49% | 10.24% | 3.21% | 15.45% |
2019年 | 11.78% | -0.96% | 6.98% | 13.09% | 33.95% |
日経平均とTOPIXとリターンを比較!期間別で紐解く
東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープンは設立以来の成績はTOPIXや日経平均を大幅に上回っています。
しかし、右側をみると直近は軟調なことがわかりますね。過去3年のリターンでみると以下の通り日経平均、TOPIXに大幅に劣後した成績となっています。
一時高値から20%ほど掘っており、試練の時期が続いています。
なぜ、近年のジャパンオーナーズの成績が日経平均やTOPIXに劣後しているのか?
なぜ近年のジャパンオーナーズのリターンが指数に劣後しているか気になった方もいらっしゃると思います。
これは人気を博した投資信託の宿命です。
大人気の「ひふみ投信」も「ジェイリバイブ 」も規模が大きくなってからは日経平均等に劣後する成績となってしまっています。
青:ひふみ投信
赤:日経平均株価
純資産規模が小さい時は、ファンドマネージャーが流動性を気にせず小型株などを売買してアクティブなリターンを追求することができます。
しかし、ファンドの規模が大きくなると小型株を売買するだけでファンド自身の買いで株価が大きく上下してしまいます。無闇に売買できなくなるのです。
そのため規模が大きい企業に分散し、結果として日経平均と同様または劣後する凡庸な成績となってしまうのです。
→ 【今からは危ない】やめたほうがいい?まだ上がる?幾度の暴落を経験し直近の運用成績がひどいと評判の「ひふみプラス」「ひふみ投信」の時代は終わった?解約すべきか?最近の不調の原因と今後の見通しを徹底評価!
規模が小さくアクティブなリターンをまさに今出し続けているファンドについては以下でお伝えしていますのでご覧いただければと思います。
掲示板での口コミや評判
掲示板での口コミや評判もみていきましょう。
口コミ①
年初には一時期3万を超えていたことを考慮すると、下げすぎだし戻りが弱いですね。
日銀のPKOの対象になる重厚長大企業が少ないことも影響しているかも知れません。
以下のような書き込みも見られますが、これは次の項目でお伝えしますが完全に円安に助けられただけです。
口コミ②
ただ米国株なんかと比べると軒並み下がっていても
ここだけは下がらず踏みとどまっている事が多いんで
S&P500や世界株のインデックス・ファンドを中心としておくのは当然だけど
3〜4番手としてポートフォリオに組み込んでおくのは全然ありだと思う。
今年がこんな状況下でありながら伸び率だけなら
fang銘柄にも負けてないのは
国内株式でありながら優秀だと思う。
ジャパンオーナーズの今後の見通し
重要なのは今後の見通しです。
ジャパンオーナーズはTOPIXや日経平均と同様の動きをしています。そのため、日本株全体の見通しがどうなるかという点が重要になります。
日経平均は2022年を通じてS&P500指数に比べて下落を耐えています。
青:日経平均
赤;S&P500指数
これはなにも日本経済が米国経済より優れていたからであありません。ドル高円安が進んだことで見た目上、日経平均が耐えているようにみえるだけです。
日経平均と円建のS&P500指数を比べたものが以下となります。円建でみるとS&P500指数に劣後した成績となっているのです。
青:日経平均
赤;S&P500指数(円建)
2022年は円安によって支えられましたが、2022年の末から以下の2つの要因で日米金利差が縮小して152円から136円まで急激に円高に調整しました。
現在は140円まで反発はしていますが、今後は円高調整となる確度が高い状況となっているのは変わりありません。理由は以下です。
- 米国の景気後退を見越した米金利の低下
- 日銀の政策変更(YCC解除)で緩和解除となる観測の上昇
実際、植田日銀新総裁のもとで7月にYCCの一部見直しが行われ、日本もいよいよ金融政策の正常化に向けて動き出したかと注目が集まっています。
次は世界で唯一現在も実施しているマイナス金利の撤廃も視野に入ってきています。
日本のインフレが今後もこの流れは続いていくことが想定されており本格的に金融引き締めにいずれ転じ円高に調整されることが想定されます。
しばらくはジャパンオーナーズも今後は厳しい展開が想定されます。
まとめ
東京海上・ジャパンオーナーズ・株式オープンについて纏めると以下となります。
- 株主が経営者となっているオーナー企業に投資
- 投資先は現在は大型株主体
- 投資銘柄は高PER銘柄が多い
- 手数料はアクティブ型投信の中でも高い水準
- 運用開始以来のリターンは日経平均やTOPIXを大幅に凌駕
- ただ過去1年は日経平均に劣後
素晴らしい投信ではありますが、下落するときは大幅に下落するところが欠点としてあげられます。
長期的に資産を形成するためには暴落を免れながら安定的な7%-10%のリターンをだすほうが魅力的です。