企業が資金調達をする際に、銀行から融資を受ける、上場して投資家を集めるなどが代表的な手法になります。
その他にも「債券(社債)」を活用して資金調達を行う場合もあります。
海外では社債(転換社債なども含む)で資金調達をするのは通常ですが、日本ではなかなか聞かないですよね。
しかし、流石はグローバルにベンチャー投資をしている経営者である孫正義氏。
同氏が率いるソフトバンクグループ(米国を中心にベンチャー投資するファンド)は社債を発行しています。
そして日本ではこの社債が大人気であっという間に売り切れになります。
今回はそのソフトバンクグループ(以降、SBG)が発行する社債はどんなものなのか?
その社債にどのようなリスクが潜んでいるのか?という点について解説してきたいと思います。
2022年11月19日現在、不穏なニュースがかなり散見されます。
ソフトバンクG孫正義氏、会社への未払い金6800億円
ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長が会社としてのSBGに対し、個人的に約6800億円の未払い金を抱えていることが、SBGの開示資料などで明らかになった。孫氏は投資事業で自身の関与を明確にし、リスクとリターンを共有するため、SBG傘下の各ファンドに出資する約束をしている。ファンドの運用成績が悪化したことで、未払いとなっている資金が増えた。
ソフトバンク、FTX出資で約1億ドルの評価損の可能性-関係者
ソフトバンクグループは暗号資産(仮想通貨)交換業者FTXに対する1億ドル(約141億円)弱の出資分について、そのすべてをゼロと評価して損失を計上することを見込んでいる。事情に詳しい関係者が明らかにした。
この関係者によると、ソフトバンクGはこれまで100億ドル未満の額をFTXに出資。出資分については取得原価に近い水準で評価しており、評価額を引き上げて利益を計上するような手法はとらずにいたという。評価損は10-12月期に計上される可能性が高いという。
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すぐに売り切れになってしまうSBGが発行する社債(劣後債)とは?
お知らせ
本債券は大好評につき完売いたしました。
たくさんのお申し込み、誠にありがとうございました。
今後とも商品ラインナップの充実に努めてまいりますのでご期待ください。
商品名 | ソフトバンクグループ株式会社 第5回無担保社債(劣後特約付) |
発行体 | ソフトバンクグループ株式会社 |
格付 | BBB+(JCR) |
利率 | 年2.48%(税引前) |
年1.976%(税引後) | |
利払日 | 毎年2/4および8/4 |
初回:2022/8/4 | |
お申し込み単位(額面) | 100万円以上、100万円単位 |
当社お申し込み期間(予定) | 1/21(金)12:00~2/3(木)14:00 |
発行価格・償還価格 | 額面金額の100% |
払込期日(発行日) | 2022/2/4 |
満期償還日 | 2029/2/2 |
期間 | 約7年 |
劣後特約 | 以下の劣後事由発生以降は、発行体の一般債務が全額弁済されるまで本債券の元利金支払は行われません。 |
(1)日本法に基づく清算手続(会社法に基づく通常清算手続または特別清算手続を含む。)の開始 | |
(2)日本の裁判所による破産手続開始 | |
(3)日本の裁判所による会社更生手続開始 | |
(4)日本の裁判所による民事再生手続開始 | |
(5)日本法によらない、上記(1)~(4)に相当する清算、破産、会社更生、民事再生、またはこれらに準ずる手続の開始 | |
発行額 | 5,500億円 |
劣後債とは?
劣後債とはそもそも何を指すのでしょうか?劣後債は普通の社債に比べて優先順位が低いことを意味して「劣後」と名付けられています。
悪い言い方をすると何事も後回しにされるということです。2023年時点でも不穏なニュースが多々出ていますが、劣後債の投資家としては不安な日々だと思います。
例えば元本と利息を受け取る権利はあります。発行体(ここではSBG)が経営破綻するなどすれば、債権者としての権利は後回しにされるのです。その代わり通常の社債に比べて利息が高いという優遇がなされます。
劣後債は通常の社債に比べて元本が帰ってくる確率が少なくなることも意味します。とはいえSBGの劣後債はとても人気です。
大手企業でありあの孫正義氏の会社であるという安心感から、投資家も躊躇なく申し込みを入れているのではないかと思います。
「あのソフトバンクだし、絶対潰れる訳がないだろう」と投資をする人が多数だと思いますが、大衆の相違とは得てして、非常に危険なものです。
(コラム)ソフトバンクとソフトバンクグループは別会社!ソフトバンクが発行する個人向け社債もある?
皆さん勘違いされがちですが、ソフトバンクとソフトバンクグループは別物です。ソフトバンクというのは皆さんお馴染みの通信会社です。ドコモとAUのライバル会社ですね。
しかし、ソフトバンクグループは通信会社ではありません。ソフトバンクグループは世界中の新興企業に投資をしているベンチャーキャピタル的な要素が強い投資会社です。
そのため、それらの会社が連鎖的に倒産などすると倒産してしまう可能性もあるのです。
ちなみに子会社のソフトバンクも2023年2月に個人向け社債を初めて発行しました。以下はBloombergから2月14日に出された記事です。
ソフトバンクが同社初の個人投資家向け社債の発行に向け、14日付で訂正発行登録書を関東財務局に提出した。第5世代通信技術(5G)やAI(人工知能)の研究開発などに充てるため1200億円を調達する。
起債するのは5年債で、発行利率は0.65-1.25%の範囲内で22日に決める。債券格付けは格付投資情報センター(R&I)から「A+」、日本格付研究所(JCR)から「AA-」を取得する。大和証券やみずほ証券、SMBC日興証券などが引き受ける。
ソフトバンク広報本部の田中涼葉氏は「資金調達手段の多様化と安定化のため個人向けに社債を発行することにした」と説明した。
ブルームバーグのデータによると、ソフトバンクの社債はサステナビリティー(環境・社会貢献)債を発行した2022年1月以来となる見込み。同年6月にも機関投資家向けに起債を予定したが起債環境の変化などを受けて見送っていた。田中氏は機関投資家向けにも「引き続き発行していく」と話した。
あとで分析するソフトバンクグループと違ってソフトバンクは収益基盤がしっかりしているのでリスクが低く得られる金利も低くなっています。
現在の日本のインフレ率を考えると実質的にマイナスリターンですね。投資する価値はありませんね。
発行価格・償還価格
額面金額の100%となっています。これはつまり、元本がそのまま100%で返ってくるということです。
社債によっては98%だったりしますが、SBGは満額で返ってきます。
利率
利率、これはつまり年利回りですが、年2.48%(税引前)となっています。
以前に書いた国債の記事でも日本国債や米国債の利回りを掲載しましたが、少し米国債には劣りますが、まずまずな利回りが提供されています。
為替リスクもない円建てですので、魅力を感じるのは理解できます。
劣後債なので、これくらいの金利で満足するかどうかは人それぞれですが、筆者であればあまり魅力を感じません。
税引き後の利回りは年1.976%となっています。1000万円であれば20万円程度が手取りになります。
最低出資額
100万円となっています。100万円購入すれば毎年2万円程度のお小遣いは入るということですね。
期間
償還までは7年となっています。7年債を買うようなものです。7年間で毎年手取り1.976%を受け取りながら、最後は満額返ってくるというものです。
投資元本が大きければ、良い投資になりそうです。
SBGが発行する社債(劣後債)に潜む危険(リスク)
当然、金融商品ですのでリスクはあります。列挙していきます。
ソフトバンクグループの倒産可能性について
大手企業であるソフトバンクグループが倒産するなどと夢にも思わない人が大半でしょう。筆者ですら、流石に・・・と思っています。
しかし、SBGの事業をよく考えてみましょう。SBGは通信会社であるソフトバンクとは異なり、「投資」を生業としています。
そしてその投資は世界中の今後跳ねるかもしれない、テクノロジー系の企業への出資です。当然、沢山の企業に投資し、例えば100社に投資し、数社大型上場すれば成功という世界でもあると思います。
しかし、一つの企業への出資が大失敗に終わり想定よりも損失が膨らんだりもしますので、中々にリスクの高い投資事業です。
昨今のWe Workの件は非常に話題になりました。
ソフトバンクグループが5月18日に発表した2020年3月期(19年4月~20年3月)の連結業績は、売上高が前年比1.5%増の6兆1851億円、営業損益が1兆3646億円の赤字(前年同期は2兆736億円の黒字)、最終損益が9616億円の赤字(同1兆4112億円の黒字)に転落した。4月に下方修正した業績予想をさらに下回る結果での着地となった。特に損失が多かった投資先は、ライドシェアの米Uber(約5555億円)、コワーキングスペース「WeWork」運営の米The We Companyとその関連会社(約4916億円)など。その他の企業群は、新型コロナ禍の影響などで合計で約8049億円の損失を計上した。
そもそもを考えてください。SBGが魅力的な成功率の高いファンドなのであれば、劣後債など必要なく資金調達をするのも非常に容易であるはずです。
それにも関わらず、明らかにSBGは株価に影響を与えないように一般投資家より劣後債という形で資金を集めています。株の公募は株式の希薄化に繋がり株価は下落してしまいますからね。
つまり、SBGの株価を下げずに、一般投資家より上手く調達できないか?といった悩みの解決法が劣後債発行なのではないかと思われます。
このハイリスクな事業体に利息2%程度でお金を貸してくれるのは一般投資家くらいだと思います。
ちなみに、米国の大型ヘッジファンド、エリオットマネジメンがソフトバンクグループの株式のほとんど全てを売却したと伝えました。
「モノ言う株主」として知られるアメリカの投資ファンドが、保有するソフトバンクグループの株式のほとんどすべてを売却し、業績の先行きへの投資家の不安を示しているなどと欧米の複数のメディアが伝えました。
イギリスの経済紙、フィナンシャル・タイムズなど欧米の複数のメディアは、「モノ言う株主」として知られるアメリカの投資ファンド「エリオット・マネジメント」が、保有するソフトバンクグループの株式のほとんどすべてを売却したと伝えました。
このファンドはおととし2月にソフトバンクグループの株式を取得したことが明らかになっていましたが、売却に踏み切ったことについて欧米のメディアは、ソフトバンクグループの業績の先行きに投資家の不安が高まっていることを示しているなどと伝えています。
直近の決算でこれまでの利益をほぼ全て吐き出してしまったとも公表していたので、当然の流れといえばそうなります。
ここからさらに相場が悪化して新興市場から資金が抜けたら倒産という自体になる可能性も十分にあるのです。
加えて、最近のニュースも不安を加速させるものばかりですね。
やはりFTX(仮想通貨の大手交換所破綻)にも手を出していました。1億ドルは日本円で140億円です。
ソフトバンクG孫正義氏、会社への未払い金6800億円
ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長が会社としてのSBGに対し、個人的に約6800億円の未払い金を抱えていることが、SBGの開示資料などで明らかになった。孫氏は投資事業で自身の関与を明確にし、リスクとリターンを共有するため、SBG傘下の各ファンドに出資する約束をしている。ファンドの運用成績が悪化したことで、未払いとなっている資金が増えた。
ソフトバンク、FTX出資で約1億ドルの評価損の可能性-関係者
ソフトバンクグループは暗号資産(仮想通貨)交換業者FTXに対する1億ドル(約141億円)弱の出資分について、そのすべてをゼロと評価して損失を計上することを見込んでいる。事情に詳しい関係者が明らかにした。
この関係者によると、ソフトバンクGはこれまで100億ドル未満の額をFTXに出資。出資分については取得原価に近い水準で評価しており、評価額を引き上げて利益を計上するような手法はとらずにいたという。評価損は10-12月期に計上される可能性が高いという。
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【2023年】日本国内の優良ヘッジファンド(&投資信託)のおすすめ先を紹介!選択に必要な知識と魅力的な金融商品をランキング形式で初心者にもわかりやすく解説
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2023年に入り、スイスの大手銀行であるクレディ・スイスが倒産の危機に直面し、同じくスイスの大手銀行であるUBSに買収される運びとなりました。そして、クレディスイスのAT1債(列後債と限りなく同列の資産)が無価値になってしまいました。
スイスの金融大手クレディ・スイス・グループと同業UBSグループとの緊急合併に伴い、クレディ・スイスが発行した劣後債の一種である「AT1債(その他ティア1債)」が無価値となった。金融機関によるAT1債の発行残高は2500億ドル(約33兆円)に上り、投資家の間で動揺が広がっている。
スイス金融市場監督機構(FINMA)は19日、クレディ・スイスが発行した約160億スイスフラン(約2兆2600億円)のAT1債の価値をゼロにすると発表した。同社も発表文でFINMAから通知があったとし、AT1債が無価値に切り下げられると明らかにした。
金融市場は何が起こるのかわからないのです。劣後債など社債を購入する際も、株を購入する際も投資家として、詳細まで徹底的に分析するという姿勢は貫く必要があります。
手間をかければかけるほど逃げ場もわかるものですし、手を出してはいけない対象もわかるはずです。
元本割れの可能性
7年間SBGが問題なく経営を続けていれば、元本は丸々返ってきてみんなハッピーで終わります。
しかし、投資家自身の家庭環境、相場環境などなど、投資家側にも資金需要が発生してしまう可能性があります。
つまり、社債を解約し現金化する必要性に迫られた時です。
満期前である場合は、当然元本の返還は約束されておらず、その際の社債の時価での取引になります。
この時価ですが、SBGの経営状況により会社の格付けが下がったり、まだ金利水準が上がっている場合には価格が下がり、そこで決済をしてしまうと損失が出てしまいます。
SBG劣後債の評判や口コミ
SBGの劣後債は筆者はIFAとして働いているという方に聞き、知りましたが、金融機関も相当販売に力を入れたようでした。
以下のような口コミなども見受けられました。
SBGの社債、見た目の利回りにつられて買ったら将来エラいことになるリスクをはらんでいると思う。この低金利の時代に時価総額ランキング5位の会社がこの利率で社債を発行する意味よ。 pic.twitter.com/Gjjtr4yToh
— ローンウルフ (@LONE_WOLF_R) November 18, 2022
SBGの円建て社債発行を見かけたが、苦しいんだろうなあ、楽天のドル建て社債もそうだったけど
— うんぜん@家畜から社畜へ (@UnzenCycling) November 18, 2022
これは相当にリスクの高い投資です。私自身が投資する気になるかと問われれば答えはNoです。特に途中換金しなければならないというのならば推奨しません。
ソフトバンクは積極経営の会社です。特に最近の大型投資としてスプリントというアメリカの大手電話会社を買収しています。買収には216億ドルという巨額のお金が注ぎ込まれています。スプリントを買収したことで会計方式がアメリカの方式に変更された為に単純比較は出来ないのですがアメリカの大手企業を買収したことで2012年→2013年→2014年と売り上げや利益が増えている一方で会社買収に必要な資金を借り入れで調達した為に借金が恐ろしい勢いで増えています。2013年3月期での有利子負債は7,790,323百万円、つまり7兆7790億円あまりというべらぼうな金額になっています。一方で同じ2013年3月期の当期利益は527,035百万円、つまり5270億円です。つまり年間利益の14.78倍も借金があるのです。例えば年収527万円の家庭で7790万円の借金があるようなものです。これは明らかに借金が多すぎます。
そしてこの莫大な借金を反映してソフトバンクの信用格付けは引き下げられています。ソフトバンクのサイトに書かれていますが特にスタンダード&プアーズ(S&P)というアメリカの信用調査会社はBB+という格付けをしています。ある証券会社からソフトバンクの社債劣後債を奨められました。年2.5%の利回りで7年償還とのこと。社債としては高利回りですが、途中で換金しなければならなくなるかもしれません。
口コミとはことなりますが孫正義氏自体も今後厳しい環境が継続することを吐露しています。
今後について孫氏は「冬がどのくらい続くかわからない。3カ月かもしれないし、3年間かもしれない」と、株価低迷が長期化する可能性があるとしたうえで、「上場株も冬の時代だがユニコーンの冬の時代のほうが長く続く」との見通しを示した。孫氏の基本的な投資手法は、スタートアップなどの未上場株に投資し、上場後に売却してリターンを得るというもの。ユニコーンの冬の時代の長期化は、SBGの苦戦がしばらく続くことを意味する。
参照:minkabu
まとめ
珍しく社債について筆者も調べてみましたが、SBGの社債に関しては調べれば調べるほどあり得ません。
とんでもない借入をしつつ、格付けも下がっている会社に2%(社債にしては当然高いですが)で大事な資金は筆者は預けられません。もっと良い投資先はいくらでもあります。
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