三菱国際投信が運用する人気の投信に「ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンド」があります。
同投信はロイヤル・マイルという愛称で親しまれています。
ロイヤル・マイルは2020年度のMorning Starの国際株式型部門の最優秀ファンドとなっています。
本日はロイヤル・マイルについて、どのような投信なのか、どのようなリターンなのかという点についてお伝えしていきたいと思います。
ロイヤルマイルの特徴とは?
それではロイヤルマイルの特徴についてみていきたいと思います。
ベイリー・ギフォード・インベストメント・マネジメント(ヨーロッパ)リミテッドが運用
ロイヤル・マイルは三菱国際投信によって販売されていますが、実際に運用を行なっているのはベイリー・ギフォード・インベストメント・マネジメント(ヨーロッパ)リミテッドです。
同社はベイリー・ギフォード&カンパニーの孫会社です。ベイリー・ギフォード&カンパニーは1908年に創業の伝統的な英国の資産運用会社です。
ロイヤルマイルは以下の通りの運用スキームになっています。
マネー・マーケット・レンディングには殆ど投資していないので、「ベイリー・ギフォード・ ワールドワイド・ロング・ターム・ グローバル・グロース・ファンド -クラスC・JPY・アキュムレーション(円建)」に投資をしています。
投資対象は全世界の株式
ベイリーギフォードは世界の株式に分散して投資しています。先進国だけでなく新興国にも分散して投資しています。
以下は国別の構成比率ですが米国と中国という超大国を中心にしたポートフォリオとしています。(ここからのデータは全て2022年11月30日時点)
順位 | 国・地域 | 比率 |
1 | アメリカ | 50.9% |
2 | 中国 | 19.5% |
3 | オランダ | 8.6% |
4 | フランス | 7.7% |
5 | ドイツ | 3.4% |
6 | 韓国 | 2.7% |
7 | カナダ | 2.3% |
8 | スウェーデン | 1.4% |
9 | シンガポール | 1.0% |
ロイヤルマイルの構成上位銘柄
ではどのような銘柄に投資しているのでしょうか?
以下はロイヤルマイルの構成上位銘柄です。米国やオランダの大型のテック企業になっています。ポートフォリオ一位にアマゾンが入っていますし、4位にテスラが入っています。この2つの銘柄は2022年は大暴落しましたよね。
(2022年11月30日)
No. | 銘柄 | 国・地域 | 業種 | 比率 |
1 | AMAZON.COM INC | アメリカ | 一般消費財・サービス | 5.30% |
2 | MODERNA INC | アメリカ | ヘルスケア | 5.30% |
3 | ASML HOLDING NV | オランダ | 情報技術 | 5.20% |
4 | TESLA INC | アメリカ | 一般消費財・サービス | 5.10% |
5 | NVIDIA CORP | アメリカ | 情報技術 | 5.10% |
6 | KERING | フランス | 一般消費財・サービス | 4.90% |
7 | PINDUODUO INC-ADR | 中国 | 一般消費財・サービス | 4.90% |
8 | DEXCOM INC | アメリカ | ヘルスケア | 4.60% |
9 | MEITUAN-CLASS B | 中国 | 一般消費財・サービス | 4.50% |
10 | ILLUMINA INC | アメリカ | ヘルスケア | 3.80% |
過去のポートフォリオの推移は以下となっています。常にテック企業が上位におり、2022年初頭から厳しい時代が続いています。いつ終わるのかもわからないレベルです。
No. | 11月30日時点 | 8月30日時点 | 5月30日時点 |
1 | AMAZON.COM INC | TESLA INC | Amazon |
2 | MODERNA INC | AMAZON.COM INC | 美団 |
3 | ASML HOLDING NV | MEITUAN-CLASS B | ILLUMINA |
4 | TESLA INC | KERING | アリババ |
5 | NVIDIA CORP | NVIDIA CORP | テンセント |
6 | KERING | ASML HOLDING NV | テスラ |
7 | PINDUODUO INC-ADR | PINDUODUO INC-ADR | KERING |
8 | DEXCOM INC | TENCENT HOLDINGS LTD | NVIDIA |
9 | MEITUAN-CLASS B | ATLASSIAN CORP PLC-CLASS A | PINDUODUO |
10 | ILLUMINA INC | MODERNA INC | ASML |
アリババが上位から消え、また美団も下位に転落しています。中国は国営企業などのバリュー株は下落していませんが、テック株は思い切り下がっているので、ロイヤルマイルのポートフォリオにも影響が出ています。
<テック銘柄が数多く含まれるナスダック総合株価指数>
上記のポートフォリオの通り、ハイテク企業に多くのポーションを割いているので、金融緩和時は高いリターンを出していたことが手に取るようにわかります。
ただ、後でお伝えする通り昨年のリターンはただブームにのっただけに過ぎません。常にこのリターンが続くわけではないということを追ってお伝えしていきたいと思います。
一般的なアクティブファンドと同じ手数料水準
ロイヤルマイルの手数料は以下の通りとなっています。
購入手数料:3.3% (税込)
信託手数料:年率1.5895% (税込)
アクティブ型の投資信託の中では平均的な手数料水準となっています。
ロイヤル・マイルのリスクとリターンを分析
では肝心のロイヤル・マイルのリターンについて紐解いていきたいと思います。運用開始から2021年末までは順調でしたが、その後、急激に基準価額を落としています。
年 | 1年 | 3年(年率) |
トータルリターン | -38.98% | 13.05% |
標準偏差 | 33.36 | 29.75 |
シャープレシオ | -1.17 | 0.44 |
大暴落ですね。そしてテック企業偏重のポートフォリオを変更しない限りは、米国の低金利政策(金融緩和)終焉、テクノロジーバブルが終わった今、しばらくは上昇の機会が全くないと思います。
上記の過去3年のリターン13.05%、標準偏差29.75%という限られた結果からではありますが、今後1年間の想定されるリターンは以下となります。
平均リターン:13.05%
リスク(=標準偏差):29.75%
【68.3%の確率】
平均値±標準偏差の範囲に収まる
▲16.7%(=13.05%-29.75%)
〜
42.80%(=13.05%+29.75%)
【95.4%の確率】
平均値±(標準偏差×2)の範囲に収まる
▲46.45%(=13.05%-29.75%×2)
〜
72.55%(=13.05%+29.75%×2)
【99.7%の確率】
平均値±(標準偏差×3)の範囲に収まる
△76.2%(=13.05%-29.75%×3)
〜
102.3%(=13.05%+29.75%×3)
参照:投資におけるリスクとは?統計学的に標準偏差を図解で理解してシャープレシオの高い投資を実践しよう!
直近はハイテクセクターは昨年上げた分の調整をしており全世界株に劣後した成績となっています。
この点を次の項目で詳しく見ていきたいと思います。
全世界株式に連動するeMAXIS Slim全世界株式のリターンと比較
全世界の株式に分散投資しているので、全世界株式と比較する必要があります。
以下はロイヤルマイルと全世界株式に投資しているeMAXIS Slim全世界株式ファンドを比較したものが以下となります。
青:ロイヤルマイル
赤:eMAXIS Slim全世界株式ファンド
直近1年に関しては全世界株に対して劣後しています。また、着目していただきたいのは株価の変動幅が大きくなっていることです。
テーマ特化型で投資している投資信託の場合、大きく価格が振れるリスクは常に考えた方がよいでしょう。
ロイヤルマイルの今後の見通し
ロイヤル・マイルはハイテク企業に分散投資をしているのでハイテク企業の株価推移が重要になります。
以下は米国のハイテク企業が多く上場しているナスダックの主要100銘柄の時価総額加重平均指数であるQQQの値動きです。
昨年のコロナショックから一本調子で上昇してきており既に価格が高くなりすぎていました。
しかし、2021年末から米国で強烈なインフレが発生していることで、金融引き締めを急速に実行しています。
結果として2021年末から米国のハイテク銘柄は下落しています。しかし、この下落はまだフェーズ1です。ここからインフレと金融引き締めの影響で米国の景気が後退する確度が高まっています。
すると、企業業績が悪化するので、ここから更に下落することが見込まれています。実際にアナリストも企業のEPS予想は下落し始めています。
Analysts increased EPS estimates for $SPX companies for CY 2022 during the second quarter. However, they have cut EPS estimates for CY 2022 since mid-June. #earnings, #earningsinsight, https://t.co/VbSzGVa0IX pic.twitter.com/paLsOypxDf
— FactSet (@FactSet) July 1, 2022
今後もロイヤルマイルも厳しいリターンとなることが見込まれます。このように特定のセクターに投資をするファンドは、ブームが終わると大きく下落するという傾向があります。
重要なのは、どのような相場であっても利益を狙うことができるファンドに投資することです。
証券アナリストでもある筆者の観点から、安定したリターンを狙えるファンドをランキング形式でお伝えしていますのでご覧いただければと思います。
ロイヤル・マイル掲示板
最後に評判だけ覗いてみましょう。
ベイリー・ギフォード『ロイヤル・マイル』、ついにコロナ禍前くらいまで落ちたか。
いくら長期投資だからって言っても、個人と企業は「長期」の時間軸が違うから、キツいなー。— 野良投資家Q (@nora_q_inv) May 14, 2022
レバレッジatmx+とロイヤルマイルが無ければ投信pfがプラスだということに気がついた。要は中国株ですね。米国株の不調を横目に上げたら気持ち良いのにな〜まだかな〜
— わいかぶ (@cusahaeta) May 7, 2022
ベイリーギフォードのロイヤルマイル投資信託で150万円含み益が出てた先輩ですが、1週間で60万円位まで減ったと。最初のルール通り10%利益で利確すべきだったと言っていた。インデックスは複利を考えて長期でもっていた方が良いがこういうアクティブファンドはどうなんだろ?複利効くのかな?
— 🌺レバレッジハワイマン🌺 (@hawaiiman0104) October 2, 2021
米国金利上がる一方だし 巨額QT始まって 逆イールド発生 リセッション開始 まだまだ下がる要素しかない ここから3割~5割ぐらい下がる覚悟は必要でしょう
復活は3年~5年後ぐらいじゃないかな? 4ケ月前にポジション大きく減らしてます
ボロクソな成績、モーニングスターの賞とか取ると皆大惨事になるここ30年は
ここは1000上がっても 2000円下がるねなんぼ口数増えても基準価格が上がらんとお金はドブに捨てるだけやで、ピーク時の半値か? 米国株式もうひとつやしな 物価は高いしどうする!
アンタッチャブルのビデオ観るわ
レバレッジでもないのに20%以上の損失が出たので、失望しています。
悩んだ末、毎日1/5くらい売却することにしました。
一機に売却しないのは、急にリバウンドが来たら後悔することになるからです。
買い増しするのは、また投資に順風が吹いているときで十分間に合うと思っています。
2022年の下げで萎えている人が多そうですね。
まとめ
ベイリーギフォードは世界の株式に分散投資をしている投資ファンドです。
ハイテク企業に多く投資しているのでリターンは高くなっていますが、あくまで昨年のブームにライドオンしたという側面が強く今後安定的にリターンをだせるかは懐疑的です。
実際、年初来からのリターンは全世界株式を下回ったものとなっています。
もっと良い投資先はいくらでもあるでしょう。
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