最近では「FIREムーブメント」の流行もあり、資産運用の重要性が多くの人にも伝わってきているように思います。
FIREとは米国発祥の言葉で、Financial Independence, Retire Earlyの頭文字をとったものです。経済的独立と早期退職を目標とするライフスタイルを啓蒙するムーブメントです。
今回は2億円の金融資産がある人は、リタイア可能なのかどうかを考えていきたいと思います。
2億円とはとても大きな金額ですが、日本にはどれくらいその資産規模を保有する人は存在するのでしょうか。
ここでは1億円以上の富裕層世帯に該当します。
合計5402万世帯の中で、124万世帯グループにいます。全国世帯の2-3%程度の割合の中にいますので、相当な資産家であることが理解できます。
これくらいの規模であれば、リタイアは可能ではないかと思うのが普通でしょう。
今回は、2億円はそもそもリタイアは可能なのか、さらに資産を増やしていくにはどのようなポートフォリオを組むべきかについて書いていきます。
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資産2億円でリタイアは可能か?
リタイアには種類があります。
- 完全リタイア
- セミリタイア
- ミニリタイア
完全リタイアは資産運用のみで生活が可能な状況。
セミリタイアは、本格的な仕事は必要とせず、少し働きながら資産運用の収入をあてにしてリタイア生活をすることを指します。
ミニリタイアは1年の半分を働き、半分を休暇でバカンスで楽しむような生活です。
完全リタイアができれば、他のリタイアも当然可能です。
結論を述べると、資産が2億円あれば一般的にはぎりぎりですがリタイア可能です。
根拠としては、最低3%程度の資産運用リターンで生活費を賄えればリタイアできるとされているからです。
2億円の3%リターンは600万円、税後で480万円です。月々の生活費を480/12ヶ月=40万円で賄えれば良いのです。
以下は総務省が出している一般的な二人以上世帯の支出平均です。
消費支出は309,469円となります。働かない場合の税金や保険料つまり非消費支出は約26,000円ですので合計33万5000円となります。
年間の資産運用リターンが480万円つまり月々40万円の資本収入があればリタイアが可能な水準ではあります。
もちろんこれは一般的な二人以上世帯の平均支出ですので、その他の支出項目をうまくやりくりしても構いません。
...しかし、だいぶカツカツですよね。
運用リターンが3%で600万円があれば楽々リタイアできるかと思いきや、実は税後の金額で考えると厳しいものであることがわかります。
ちなみにキャピタルゲインや配当にかかる税率は正確には20.315%です。
正直、2億円を資産運用するだけでは心許ない生活になる
資産2億円で完全リタイアは、うまくやりくりすれば可能だと述べました。
しかし、これは最低限の生活をギリギリできるでしょう、という心許ない結果です。
もう少しゆとりのある、趣味や文化に浸る、海外旅行などもできるような生活を目指したいものです。
2億円あるのに、余裕のない生活というのはよくわからないですよね。
先ほどの表で無理のある部分を直したものが以下となります。特に住居が19,806円というのは非現実的ですよね。
項目 | 金額 |
食料 | 78,605→100,000 |
住居 | 19,806→150,000 |
水道・光熱 | 21,353 |
家具・家事用品 | 12,688 |
被服費 | 10,522 |
保険医療 | 12,998 |
交通・通信 | 49,515 |
教育 | 19,187→120,000 |
教養娯楽 | 27,543 |
その他消費支出 | 57,252→100,000 |
税金 | 26,000 |
月額合計 | 309,469→630,619 |
年間合計 | 3,713,628→7,567,428 |
ゆとりある、充実した人生を送るためには月間63万円が必要となります。
ここでも年率3%程度で考え、必要な資産額を考えてみましょう。
月間63万円つまり年間756万円程度を税後で賄うことを考えましょう。3%運用で賄うとしたら約3億2000万円が必要です。
本当のリタイアは3億円以上になるということです。
50歳時点で2億円の資産があればリタイア可能か?
上記はあくまで元本を減らさずにリタイアできるのか?
という観点でお伝えしてきました。では取り崩しまで加味するとどうなるでしょうか?
50歳夫婦がリタイアした場合を考えましょう。
50歳から65歳までは年間750万円の家計支出が発生します。つまり15年間で約1億1000万円の費用を支払うこととなります。
すると2億円から1億1000万円を支払い9000万円が残ります。(実際には得られる配当金もあるので更に多くの金額が残ります)
では65歳以上に発生する費用を算定してみましょう。以下は平均的に発生する65歳以上の高齢無職夫婦の家計収支です。
同様に豊かな老後を送る前提で修正したものが以下となります。既にローンを支払い終えているのであれば住居は以下のままで問題ありません。固定資産税ですね。
項目 | 金額 |
食料 | 65,760→100,000 |
住居 | 16,608 |
水道・光熱 | 19,526 |
家具・家事用品 | 10,324 |
被服費 | 4,938 |
保険医療 | 16,159 |
交通・通信 | 25,137 |
教養 | 19,301→50,000 |
その他消費支出 | 46,458→100,000 |
税金等 | 30,664 |
月額合計 | 353,830 |
(-)年金受け取り | 216,519 |
年間差し引き合計(月間) | 137,311 |
年間差し引き合計(年間) | 1,647,732 |
年間の不足分165万円で65歳から100歳までの35年間いきるとすると、必要経費は5775万円となります。
9000万円の資産が65歳時点で残っていればリタイアは十分可能ということになります。
上記はあくまで厚生年金で生活する場合を考えています。
仮に自営業で夫婦が二人とも国民年金で生活する場合を考えてみましょう。
・国民年金
国民年金のみの「平均支給月額は約5万5,000円」です。納付期間40年間、満額で支払い続けると、「満額支給月額は約6万5,000円」になります。
夫婦二人で月額13万円となります。厚生年金世帯の場合との差額は月額8万6000円、年間103万円の負担増になります。
35年間だと3600万円の負担増となります。すると必要経費は9375万円となりますので、ぎりぎり9000万円残っていればDie with Zeroで人生の終焉を迎えることができます。
インフレには気をつけよう!
50歳時点で資産2億円あり、年金を貰う前提であれば資産を取り崩しながら完全リタイアができることがわかりました。
しかし、資産を取り崩す前提の場合は、多くの人は「現金」で預金口座に置いておくと思います。
この場合、現金の価値が希薄化する可能性があることもしっかり理解しておきましょう。
インフレを考慮するということです。
インフレ率は物価上昇という意味で覚えている人も多いと思いますが、その本質は通貨価値の減価です。
現金の価値が下がってしまうと、先ほど計算した余生の計画は崩れてしまいます。
2億円で1%現金の価値が減価するだけで、200万円目減りするということです。
2020年の日本のインフレ率は-0.1%でした。
現在は現金の価値は落ちていません。しかし、日本政府はインフレターゲットを2%に置いています。
将来的に、この水準になるよう様々な政策を打っていくことは目に見えています。
つまり、現金の価値は希薄化していくことは確定的です。
インフレから2億円を守るためにも、資産に投資をして、リスクを押さえておきましょう。
株式、債券、ヘッジファンドとはなどに資産を割り当てるのが欧米では通常です。
資産3億円を目指す人は安定運用ポートフォリオ割合を検討
資産2億円までせっかくきたのだから、さらに資産を高め3億円を目指そうという人もいるでしょう。
そのような場合、安定的に資産を守りながら着実に増やしていく方法を取るべきです。
私であれば、以下でポートフォリオを組みます。
資産クラス | 銘柄名 | 金額 |
ヘッジファンド | ヘッジファンド | 50% |
全世界株 | eMAXIS Slim 全世界株式 | 30% |
金 | ETFのGLD | 20% |
ヘッジファンド
ヘッジファンドを最大ポーションとしているのは、米国一流大学のイェール大学のポートフォリオを参考にしています。
イェール大学は過去20年間の平均リターンは10%を超えています。
資産規模が大きければ、10%という数字は非常に迫力のある数字です。2億円でしたら2000万円のリターンが見込めるということですから。
The university’s longer-term results remain in the top tier of institutional investors. Yale’s endowment returned 10.9% per annum over the 10 years ending June 30, 2020
<<中略>>
Yale’s endowment returned 9.9% per annum over the 20 years ending June 30, 2020, exceeding broad market results for domestic stocks, which returned 6.2% annually, and for domestic bonds, which returned 5.1% annually.
年度 | リターン |
2011年 | 21.9% |
2012年 | 4.7% |
2013年 | 12.5% |
2014年 | 20.2% |
2015年 | 11.5% |
2016年 | 3.4% |
2017年 | 11.3% |
2018年 | 12.3% |
2019年 | 5.7% |
2020年 | 6.8% |
3年間のポートフォリオ構成は以下の通りとなっています。
2020年 | 2019年 | 2018年 | |
ヘッジファンド | 23.5% | 23.2% | 26.1% |
米国株 | 2.25% | 2.7% | 3.5% |
米国以外の株 | 11.75% | 13.7% | 15.3% |
PEファンド | 17.5% | 15.9% | 14.1% |
商品(金等) | 4.5% | 4.9% | 7.0% |
不動産 | 9.5% | 10.1% | 10.3% |
ベンチャー キャピタル |
23.5% | 21.1% | 19.0% |
現金と債券 | 7.5% | 8.4% | 4.7% |
ヘッジファンドは下落相場でも積極的にリターンを狙う、絶対収益型のファンドです。
欧米では盛んな投資先ではありますが、日本国内ではそこまで多くのヘッジファンドは存在しません。
ヘッジファンドについて詳しくは記事でも紹介していますので参考にしてみてください。
特に資産が大きい場合には、下落体制の強い、着実にリターンを出せるヘッジファンドを選ぶべきです。
私はBMキャピタルで運用していますが、安心感を持って、資産を運用できています。
全世界株式(eMaxisSlim)
全世界の成長に劣後しないよう、ポートフォリオに全世界株を組み入れます。
長期のチャートを見ると、ヘッジファンドにリターンは劣後しますが、安全資産としての位置付けとして保有しておけば良いでしょう。
ゴールド(金)
世界的にマネタリーベースは上昇しています。
市場に札束が舞う量が多いということは、それだけキャッシュの価値が下がるということです。
そして、相対的に資産は大きくなるということです。以下は金のチャートです。
ゴールドは
- 中国やインドの成長
- 地政学的リスク高騰
- インフレ懸念
に敏感に反応し、価値が高まります。
2022年現在はマネタリーベースの上昇でインフレ懸念、中国の一早い新型コロナウィルス脱出、そして景気回復、インドの今後の経済展望などを考えると、十分に金は上昇する環境が揃っています。
まとめ
今回は2億円あったらリタイアは可能なのか。
可能だとして、気をつけるべき点。また3億円を目指す人におすすめのポートフォリオについて解説してきました。