国内小型バリューファンドである「J-Stockアクティブ・オープン」の実際の成績を見ていきたいと思います。
純資産は120億円程度の中規模ファンドです。
J-Stockアクティブ・オープンの特徴とは?
J-Stockアクティブ・オープンの特徴を見ていきたいと思います。
三井住友DSアセットマネジメントが運用
三井住友DSアセットマネジメントが運用を行います。大手金融機関でバリューファンドをここまで展開しているのは三井住友DSアセットマネジメントだけではないでしょうか?力の入れようが凄いです。
三井住友DSアセットマネジメントは、このブログでも過去に分析したマイ・ウェイ・ジャパン、大和住銀日本小型株ファンド、ニッポン中小型株ファンドもあります。
設立は1985年7月15日。運用する投資信託財産の合計純資産総額9兆9,701億円(2021年4月30日現在)と、老舗の大手です。
但し大手だからといってリターンが良いことには繋がりません。会社のネームバリューで普通(またはそれ以下)の商品を売っていることがほとんどなのが、金融業界の不思議です。
<三井住友DSアセットマネジメントのその他展開商品>
- グローバルAIファンド
- 日興FW・日本債券ファンド
- SMBCファンドラップ・日本債
- テトラ・エクイティ
- 三井住友・DC外国株式インデックスファンドS 他
今流行りのファンドラップも展開していますね。
投資対象は国内株式(JASDAQ市場、マザーズ等)
「J-Stock銘柄」という独自の銘柄選定で選ばれた株式を購入するとのことです。
JASDAQ上場銘柄のうち、売買代金および時価総額などについて一定の基準を満たし、株式 会社東京証券取引所によって選定された銘柄をいいます。また同社は、同銘柄で構成され時 価総額加重平均方式により算出される株価指数を「J-Stock Index」として発表しています。
具体的な銘柄選定における数値基準は公表されておりません。
ファンダメンタルズ分析の主なポイント
・期待成長率
・成長の持続性
・財務体質 等
バリュエーション分析の主なポイント
・成長性を勘案したPER(株価収益率)
・PBR(株価純資産倍率)
・ROE(株主資本利益率)
・収益モメンタム 等
J-Stockアクティブ・オープンの構成上位銘柄
まずは構成業種です。日本株ファンドに関しては電気機器、情報・通信業が上位に来るのは定番ですが、J-Stockアクティブ・オープンも情報通信業が上位に来ていますね。他のバリューファンドでは卸売業、化学、サービス業が上位にくる傾向がありました。一味違う運用成績が見れるかもしれないです。
ここでは卸売業は10位です。割安株を見るファンドはそれぞれ独自の視点を持っていて面白いですね。
業種 | 投資比率 | |
1 | 情報・通信業 | 18.6% |
2 | 不動産業 | 10.4% |
3 | サービス業 | 8.6% |
4 | 建設業 | 7.8% |
5 | 電気機器 | 7.6% |
6 | 化学 | 6.0% |
7 | 鉄鋼 | 4.9% |
8 | その他製品 | 4.4% |
9 | 輸送用機器 | 4.2% |
10 | 卸売業 | 4.2% |
具体的な銘柄は以下の通りです。
投資銘柄 | 業種 | 投資比率 | |
1 | 東北特殊鋼 | 鉄鋼 | 4.9% |
2 | シノケングループ | 不動産業 | 4.7% |
3 | 沖縄セルラー電話 | 情報・通信業 | 4.6% |
4 | 構造計画研究所 | 情報・通信業 | 4.5% |
5 | No. 1 | 卸売業 | 4.2% |
6 | フクダ電子 | 電気機器 | 4.0% |
7 | レーサム | 不動産業 | 3.8% |
8 | ナフコ | 小売業 | 3.7% |
9 | 高橋カーテンウォール工業 | 建設業 | 3.6% |
10 | GMOフィナンシャルホールディングス | 証券、商品先物取引業 | 3.5% |
鉄鋼の東北特殊鋼、不動産業のシノケングループ、情報・通信業の沖縄セルラー電話。東北特殊鋼、など、人気株という感じではなくて、投資のプロの目線が入っている感じが期待できますね。
沖縄セルラー電話は新値を超えてきていますね。それ以外は横ばいで新値は遠い状況です。詳しい買いタイミングと売りタイミングはわかりませんが、着実に利益を出せていると良いですね。
手数料体系
購入手数料は、購入価額に3.3%(税抜き3.0%)を上限として、販売会社毎に定める手数料率を乗じた額。
信託報酬はファンドの純資産総額に年1.65%(税抜き1.50%)の率を乗じた額です。
一般的なアクティブ投信の手数料形態です。
J-Stockアクティブ・オープン のリスクとリターンを分析
肝心のJ-Stockアクティブ・オープンのリターンについて紐解いていきたいと思います。
年 | 1年 | 3年 (年率) |
5年 (年率) |
10年 (年率) |
トータルリターン | 33.40% | 1.66% | 10.66% | 18.75% |
標準偏差 | 15.07 | 23.17 | 19.02 | 18.06 |
10年率は高い水準のトータルリターンとなっています。小型株を扱っていることから、標準偏差は高めです。新興国へ投資しているリスクとほぼ同様ですね。
年率に関しては、異様に成績が高かった年のリターンが混ざり、少し下駄を履いている可能性があります。各年の通年リターンも正確に見ていきましょう。
1-3月期 | 4-6月期 | 7-9月期 | 10-12月期 | 1-12月期 | |
2021年 | 12.50% | -2.84% | -- | -- | -- |
2020年 | -29.01% | 17.90% | 6.65% | 10.74% | -1.15% |
2019年 | 15.95% | -4.86% | 1.42% | 16.81% | 30.69% |
2018年 | 2.07% | -2.86% | -1.15% | -23.62% | -25.15% |
2017年 | 14.47% | 2.39% | 7.31% | 12.38% | 41.34% |
やはり、2020年、2018年とマイナスを出してしまっています。すごいボラティリティですね。下落耐性への不安があります。
これは、同じく三井住友系バリューファンドのニッポン中小型株ファンド、大和住銀日本小型株ファンドも全く同じ傾向でした。
銘柄が違っても、小型株は似た動きをする側面があるのでこのような状況になっているのだと推測します。
小型株の中でも、下落に強い銘柄はありますが、選定は非常に難しいものです。ファンドマネジャーの手腕が問われます。
筆者個人としては通年でマイナスを出すファンドで運用することはしません。複利運用のインパクトを最も重要視しているからです。
J-Stockアクティブ・オープンはここ5年で二回もマイナスを出してしまっていますね。
マイナスを出さないことの重要性についてはあの世界が誇る投資家であるウォーレンバフェットも、投資で最も重要なルールとして「損失を出さない」を挙げています。
Rule No. 1: Never lose money. Rule No. 2: Never forget rule No. 1.
ウォーレン・バフェット
ニッポン中小型株ファンドの今後の見通し
バリュー株ファンドに関しては今後の見通しなどを考えるのは非常に難しいです。
何よりも、これまでどのような実績を出してきたかが大切です。
年率リターンではたしかにJ-Stockアクティブ・オープンは優秀なのですが、マイナスの年とプラスの年とのボラティリティがあまりにも高いです。
また、2020年のコロナショックをやはり吸収しきれず、マイナスに終わっており、下落体制に弱いことが証明されているため、
安定運用、複利のインパクトをしっかりと享受して資産を増やしていく上では、わざわざ選ぶファンドではないと思いました。