「ひふみ投信」といえば日本のアクティブ型投信の中で最も有名な投資信託なのではないでしょうか?
投資をはじめる際に「ひふみ投信」への投資を考えていることも多いかと思います。2017年2月にカンブリア宮殿に取り上げてから知名度はうなぎ上りで、運用資産額は1400億円という規模になっています。

たしかにひふみ投信は運用を開始した2008年10月から2016年末までは高い圧倒的に高いリターンを叩き出していました。
しかし、純資産額が急騰した2017年からのリターンは著しく低下しており、日経平均株価にも劣後した成績となっています。
青:ひふみ投信
赤:日経平均株価

本日は、そもそも「ひふみ投信」がどのような投資信託なのかという点についてお伝えしたい上で、「ひふみ投信」の成績が悪化している理由と今後の見通しについて考察していきたいと思います。
「ひふみ投信」の特徴とは?
まず「ひふみ投信」の特徴についてみていきたいと思います。
運用から販売まで一貫して行う独立系投資信託
普通の投資信託は運用を行う会社と、販売を行う会社が別々のケースが多いです。
しかし、「ひふみ投信」はレオスキャピタルが販売から運用まで一貫して行います。このような投資信託の形式を独立系投資信託と言います。
日本には「ひふみ投信」の他にも代表的なものでも以下のような独立系投資信託が存在しています。
- セゾン投信
- さわかみ投信
- 鎌倉投信
- ありがとう投信
- コモンズ投信
- みのりの投信
「ひふみプラス」は証券会社が販売する「ひふみ投信」
「ひふみ投信」は基本的には直販形式なのですが、証券会社でも購入することができます。
証券会社経由で購入することができる「ひふみ投信」のことを「ひふみプラス」と呼んでいます。楽天証券の日本株の投資信託の中では第一位の人気を誇っています。

楽天証券だけでなく、SBI証券やマネックス証券などの主要なネット証券や、野村証券や大和証券などの主要な証券会社、更には多くの銀行で取り扱われています。
ファンドマネージャーは藤野英人
ひふみ投信のファンドマネージャーは藤野英人氏です。

野村投資顧問(現:野村アセットマネジメント)、ジャーディンフレミング(現:JPモルガン・アセット・マネジメント)、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントを経て、2003年レオス・キャピタルワークス創業。中小型・成長株の運用経験が長く、ファンドマネージャーとして豊富なキャリアを持つ。
参照:ひふみ投信「役員紹介」
藤野氏が得意とするのは、中小型成長株の運用です。
「ひふみ投信」は藤野氏の得意とする中小型成長株で大きなリターンを上げてきた投信です。そして、このことが実は後で紹介する不調の原因と密接に絡んできます。
また、藤野氏は以下のような書籍を著しています。ちなみに以下でも一部です。
- 投資バカの思考法
- 藤野さん、「投資」ってなにが面白いんですか?
- 君の人生を変える100の小さな習慣
- 投資家が「お金」よりも大切にしていること
- 儲かる会社、つぶれる会社の法則
- 日経平均を捨てて、この日本株を買いなさい
- ゲコノミクス 巨大市場を開拓せよ
組入上位はどんな銘柄?
では「ひふみ投信」はどのような銘柄に投資しているのでしょうか?最新の2020年12月末のレポートからみてみましょう。
順位 | 会社名 | 区分 | 組入比率 |
1 | 東京センチュリー | 東証一部・大型 その他金融業 |
2.12% |
2 | ソニー | 東証一部・大型 電気機器 |
1.61% |
3 | シーボンド ホールディングス |
東証一部・中小型 建設業 |
1.55% |
4 | JTOWER | マザーズ・中小型 情報・通信業 |
1.54% |
5 | BILIBILI INC ADR | NASDAQ・大型 海外株 中国の動画サイト運営 |
1./47% |
6 | 村田製作所 | 東証一部・大型 電気機器 |
1.42% |
7 | SHIFT | 東証一部・中小型 情報通信 |
1.33% |
8 | 東京応化工業 | 東証一部・大型 化学 |
1.29% |
9 | あい ホールディングス | 東証一部・中小型 卸売業 |
1.28% |
10 | ミライト ホールディングス |
東証一部・中小型 建設業 |
1.28% |
中小型株も含まれていますが、皆さんが知っているような大型銘柄も多く含まれていますね。また、本来藤野英人氏が得意とする超小型株は一つもありません。
このことが後で重要になってきます。
現金比率は50%まで引き上げ可能で暴落に備える体制
「ひふみ投信」は最大現金比率を50%まで高められる方針としてます。

市場暴落局面で100%を株式に投資をしていれば大きな損失を被りますからね。暴落前に現金比率を高めておれば、ポートフォリオの下落率を抑えることができます。
ただ、後でお伝えしますが基本的に「ひふみ投信」は現金比率は20%未満となっており、コロナショック相場の3月に底で仕込まないといけない時にむしろ現金比率が高くなってしまっていました。
アクティブ型投信の中では安い手数料体系
「ひふみ投信」はアクティブ型の投信です。

アクティブ型の投資信託の手数料は基本的に高い水準となっています。

ただ、「ひふみ投信」は比較的低い手数料水準を提供しています。
購入手数料は無しのノーロード型で、信託手数料は1%という水準になっています。アクティブ型の信託手数料の平均が1.4%程度であることを考えると割安ではありますね。
長期投資家は更なる手数料優遇制度が整えられている
「ひふみ投信」は5年以上投資をしてくれている投資家に対して手数料の還元制度を整えています。
5年以上投資をしている投資家は、支払った1%の手数料の中から0.2%分を新規の「ひふみ投信」購入という形で還元します。
注意しないといけないのは、手数料の内0.2%分を現金で還元するわけではないということです。つまり0.2%分だけ「ひふみ投信」への投資元本が増加することになります。
更に10年以上投資をしている投資家は04%分を新規の「ひふみ投信」購入という形で還元を行なっています。

ひふみ投信の成績・実績を徹底評価
では一番肝心な「ひふみ投信」の成績について見ていきたいと思います。
過去10年の成績は日経平均を圧倒
過去10年の「ひふみ投信」と「日経平均」の比較は以下となります。
青:ひふみ投信
赤:日経平均株価

日経平均は配当金拠出後のチャートであるため、実際はもう少しリターンは高いですが、「ひふみ投信」のリターンの高さは目を引きますね。
特に2017年の半ばまでのリターンは特筆するべきものがあります。しかし、2018年から明らかに停滞していることが見て取れます。
過去3年だと日経平均に劣後する成績
ではもう少し短い期間でみてみましょう。以下は最初にも紹介した過去3年の「ひふみ投信」と「日経平均」の比較チャートです。
青:ひふみ投信
赤:日経平均株価

日経平均はここに更に配当金が加味されるので、「ひふみ投信」との差は広がります。過去3年でみると、むしろ株価指数以下のリターンに陥ってしまっているのです。
また、パターンとして殆ど値動きは日経平均と連動したものとなっていますね。
ひふみ投信のリスクリターンは凡庸
以下は過去3年のひふみ投信のリスクリターンとなります。
日本株式より高くなっていますが、これはTOPIXの話です。日経平均と比べると上述の通り劣った成績となっています。

ひふみ投信のリスク17.8%でリターンが6.7%ということから考えられる今後1年間の想定リターンは以下となります。
平均リターン:6.7%
リスク(=標準偏差):17.8%
【68.3%の確率】
平均値±標準偏差の範囲に収まる
▲11.1%(=6.7%-17.8%) 〜 24.5%(=6.7%+17.8%)
【95.4%の確率】
平均値±(標準偏差×2)の範囲に収まる
▲28.9%(=6.7%-17.8%×2) 〜 42.3%(=6.7%+17.8%×2)
【99.7%の確率】
平均値±(標準偏差×3)の範囲に収まる
▲46.7%(=6.7%-17.8%×3) 〜 60.1%(=6.7%+17.8%×3)
大きな損失を被る可能性もあるということですね。
リスクは結構高い部類であるといえるでしょう。リスクの考え方については以下でお伝えしていますので参考にしていただければと思います。
→ 投資におけるリスクとは?標準偏差を理解してシャープレシオの高い投資を実践しよう!
「ひふみ投信」の成績のまとめ
「ひふみ投信」の実績・成績をまとめると以下となります。
- 過去10年のリターンは圧倒的
- 直近3年は日経平均を下回る成績
- 日経平均と同様の動きをしている
- リスク(=標準偏差)は結構大きい
では、なぜこのような成績になってしまったのでしょうか。その原因について切り込んでいこうと思います。
「ひふみ投信」の成績が不調に陥った原因を紐解く
「ひふみ投信」の不調の要因はずばり「運用手法の変更」です。
元来、ファンドマネージャーの藤野英人氏が得意とする投資手法は超小型成長株投資です。しかし2017年初を境として超小型株の比率が著しく低くなっています。2012年では最大ポーションだったのにです。
では2017年に何があったか思い出してみましょう。そう、皆さんご存知の「カンブリア宮殿」で特集されました。
結果として投資家から資金が大量に流入して300億円程度だった純資産は1400億円程度まで一気に急騰しました。

結果として、超小型株を中心とした運用を行えなくなりました。現在では大型株と中小型株中心の運用となっているため、本来の藤野英人氏の手腕が活かせなくなってきているのです。
今後の見通しもインデックス的な動きになることが想定される
最近の「ひふみ投信」の構成は2017年から大きく変わっていません。
時価総額の大きい銘柄に投資しており、なおかつ260銘柄に分散投資をしています。結果的に日経平均と同様の動きとなることが今後も想定されます。
大型株に対して、しかも非常に多くの銘柄に分散投資をしていれば当然インデックスと同様の値動きになってしまうのです。
手数料を払っていることを考えると、あえて「ひふみ投信」に投資をする意味は筆者としては見当たりません。
「ひふみ投信」に限らず「ジェイリバイブ 」などの過去に高い成績を残していたファンドも、人気を集めて投資家から資金が流入すると凡庸な成績となってしまいます。
ある程度大きい運用資産残高となっている投信は大規模銘柄に分散投資をして結果的にインデックス的な動きとなる宿命とする傾向があるのです。
まとめ
「ひふみ投信」は過去に高い成績をだしていましたが、カンブリア宮殿で特集されてから資金が流入し大型株中心のポートフォリオになっています。
結果として、直近3年間は日経平均に劣後する結果となっています。現在のポートフォリオを見る限り今後もインデックス的な動きになることが想定されます。
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