フィデリティは米国の伝統的なファンドです。日本向けに展開している投資信託はどのようなリターンを提供しているのでしょうか?
しっかりと分析して投資妙味を見ていきたいと思います。
今回取り上げるファンドの正式名称は「フィデリティ・US・リートファンド」です。
名前からわかる通り、米国リートに分散投資するファンドということですね。
フィデリティ・US・リートファンドとは?
ファンド概要
商品分類:
- 単位型・ 追加型:追加型
- 投資対象 地域:海外
- 投資対象資産 (収益の源泉):不動産投信
属性区分:
- 投資対象資産:その他資産 (投資信託証券 (株式 一般))
- 決算頻度:年12回(毎月)
- 投資対象地域:北米
- 投資形態:ファミリー ファンド
- 為替ヘッジ:あり(フルヘッジ)or なし
ファミリーファンド方式で海外(北米)の不動産投信に投資を行うファンドであることがわかりました。
不動産は景気に非常に敏感ですが、どのようなリターンを長期的に投資家に提供するのかをしっかり見ていきたいと思います。
そもそもリート(=REIT)とは?
そもそもREITとはどのようなものなのかをまず説明したいと思います。
REITとは不動産投資信託のことです。投資家から集めた資金を不動産市場に投資を行い得られた賃料収入や値上がり益を投資家に分配するという仕組みです。
ただ、普通の企業と異なるのが免税の仕組みです。
通常の企業は得られた利益に法人税が徴収された後に、配当金を出すことになります。
しかしリート法人は得られた利益の90%以上を投資家に配当金としてだすことで法人税を徴収されないという税的なメリットが提供されています。
つまり、利益の殆どを配当金として拠出するので配当利回りが高い傾向にあります。
しかし、殆どを配当金としてだすので内部留保がすくなくなり、新規で投資することができません。
そのため複利で利益を増加させていくことが難しく長期的に大きな利益を狙うのが難しくなります。
ファンドの特色と組入銘柄:米国の取引所に上場されている不動産投資信託(リート)に投資
ファンドの配当利回りがベンチマーク以上となることを目指して運用を行なうことになっています。
投資家からすればこれは朗報のように感じます。
しかし、元本が毀損してしまえば配当受け取りと合わせてトータルでマイナスになってしまう可能性もあることは念頭に置いておいた方が良いでしょう。
2023年4月時点のポートフォリオを少し見てみましょう。
銘柄 | 形態 | 比率 | |
1 | プロロジス | 物流 | 10.0% |
2 | エクイニクス | データセンター | 8.40% |
3 | ウェルタワー | ヘルスケア | 5.40% |
4 | ベンタス | ヘルスケア | 5.00% |
5 | クラウンキャッスルインターナショナル | インフラストラクチャー | 5.00% |
6 | デジタル・リアルティ・トラスト | データセンター | 4.90% |
7 | キューブマート | 倉庫 | 4.30% |
8 | エクストラ・スペース・ストレージ | 倉庫 | 4.20% |
9 | UDR | 住宅 | 4.10% |
10 | ミッド・アメリカ・アパートメント・コミュティーズ | 住宅 | 4.00% |
2022年12月末からの推移は以下となります。銘柄は入れ替わっておらず価格の上下によって順位が変わっているだけですね。
2023年4月末 | 2022年12月末 | |
1 | プロロジス | プロロジス |
2 | エクイニクス | エクイニクス |
3 | ウェルタワー | ウェルタワー |
4 | ベンタス | デジタル・リアルティ・トラスト |
5 | クラウンキャッスルインターナショナル | ベンタス |
6 | デジタル・リアルティ・トラスト | クラウンキャッスルインターナショナル |
7 | キューブマート | ミッド・アメリカ・アパートメント・コミュティーズ |
8 | エクストラ・スペース・ストレージ | UDR |
9 | UDR | エクストラ・スペース・ストレージ |
10 | ミッド・アメリカ・アパートメント・コミュティーズ | キューブマート |
筆者は株式専門であり、テクノロジー、資源関連株は詳しいですが不動産関連の有望銘柄はあまり知りません。
しかし、どんなファンドでも見方は同様です。「リターン」です。価値のない投資対象に投資をしているようであれば即切るだけです。
上位銘柄のリターンを見ていきましょう。 不動産は低金利、インフレでしたから、天井をつけて2022年は下落していると思いますがどうでしょう。
一位のプロロジスはサンフランシスコに本社を置き、主に物流施設に投資、開発、管理、運営しているアメリカ合衆国の不動産会社です。
株価は以下の通り、2022年は大幅下落です。
ハイテク株式並みの下落です。基本的には金利を上げているのですから不動産は下落して当然の結果です。
金利が高くなると不動産を買うのが難しくなるので、不動産価格は下がります。不動産価格が下がるということは家賃収入も下落、売却時のキャピタルゲインも減少となります。
つまり、米国の不動産バブルは終わったということです。1年の株価推移を見ると明らかにバブルが崩壊したことが見て取れます。
不動産にとっては金融引き締め時期は地獄に落ちる以外に道はありません。
そのため、たとえフィデリティ・US・リートファンドの成績が直近良くても、今が買いタイミングになることはありません。
安定した資産を形成するためには、大きな暴落を被ることなる安定したリターンを積み上げることができる資産に投資をすることです。
筆者は市場がいかなる環境でも安定したリターンを期待できるヘッジファンドに投資をしています。
ヘッジファンドは以下の通り市場平均より低いリターンで安定したリターンをあげ続けています。
以下では筆者が投資しているファンドを含めて安定したリターンを出しているファンドについて纏めていますのでご覧いただければと思います。
フィデリティ・US・リートファンドの基準価額の推移とは?分配金再投資リターンには気をつけよう。
以下は基準価額の過去推移です。
2022年はマイナス10%程度の損失でしたが、これは25%程度上昇したドル高、円安の影響があってこれですから、ファンドとしてはさらに成績は悪いことになります。
1-3月期 | 4-6月期 | 7-9月期 | 10-12月期 | 1-12月期 | |
---|---|---|---|---|---|
2023年 | -0.77% | - | - | - | - |
2022年 | -2.96% | -15.98% | -13.35% | -2.29% | -- |
2021年 | 9.93% | 12.33% | 1.97% | 13.38% | 42.77% |
2020年 | -20.79% | 7.87% | 2.93% | 6.27% | -6.54% |
2019年 | 15.65% | 0.54% | 7.00% | -1.92% | 22.03% |
2018年 | -7.78% | 7.95% | -1.39% | -6.84% | -8.55% |
2003年に設定し、10,000円から始まった基準価額は2023年5月末時点で2,951円です。つまり、運用成績は70%のマイナスになるのですが、これは配当を払っているからです。
配当を再投資した場合で計算される「累積投資額」が本来のリターンとなります。そちらは42,168円となっています。設定来+320%となることがわかります。
まずまずのリターンですね。20年かけて4.5倍ですから、年率に直すと7.46%の平均利回りです。ただ、米国リートのインデックス以下のリターンとなってしまっています。
しかし、上記は配当再投資した場合です。
上記の分配金再投資は税金を出さない前提で導かれています。税金も考慮されていないため、投資家が手にしている収益はここから大きく下がります。
分配金再投資コースの話です。平均利回り5%もないのではないでしょうか。複利が生かせないですからね。
ついでにいえば上記はヘッジなしなので2022年のリターンはほとんどが円安です。
実態のリターンはもっと低いでしょう。
為替ヘッジなしで購入している人は特に注意です。今後は米国の不況起点で円高が来ますので、円高によるマイナスリターン拡大という地獄がきます。
なぜならば、個人投資家は自分で分配金を再投資したとしても、そこにはキャピタルゲイン税金を支払った後の手取り収入を投資することになります。
例えば100万円受け取っても20%の税金を引かれた後の80万円しか投資ができません。
分配金を出すファンドは「複利」の恩恵が得られないのです。筆者は分配金を出すファンドに投資することはありません。資産構築に遠回りしている場合ではないのです。
分配金を謳えば、マネーリテラリーの低い投資家をたくさん集めることができるので、分配金ファンドは今後もなくならないでしょう。
特別分配金を出しており投資家の目線に立てていない
更にフィデリティUSリートファンドについては注意するポイントがあります。
以前お伝えしたゼウス投信と同じく特別分配金をだしています。
通常、健全な配当金や分配金は得られたリターンから拠出されます。
しかし、リターン以上の分配を出すケースの場合、投資元本から分配金が拠出されることになります。
つまりリターンから分配金を受け取っているという投資家は残念ながら自分が預け入れた元本から分配金が引き出されていることになるのです。
そして、注意しないといけないのは、その元本には購入手数料と信託手数料が発生しているということです。
つまり、手数料を支払って預金を行い自分で引き出しているということになるのです。非合理的ですよね。
特別分配金をだしつづけると基準価額が下落しつづけるので、当然分配金の金額も小さくなっていきます。
現在は毎月35円つまり年間420円のペースで出しています。これは基準価額ベースでいうと15%の水準です。
リターンが5%程度なのに15%の分配利回りということは大半が特別分配金ですね。
しかし、基準価額が10,000円だった時は、毎月100円つまり年間1200円の配当金をだしていました。現在は大幅に配当金の総額は減少しているのです。
最初に基準価額10,000円の時に投資した方からすると現在の年間420円の配当金では配当利回りは4%という水準になります。
長期投資している方からすると、ずっと配当利回りも低くなりつづけているのです。
フィデリティUSリートファンドの今後の見通しとは?
重要なのは今後の見通しです。
不動産価格に重要な影響を与えるのは住宅ローン金利です。金利が高くなると高い不動産を購入できなくなるので不動産価格は需給で下落していきます。
以下のとおり米国の住宅ローン金利は急上昇しています。
これは加熱しているインフレを抑えるために米国の中央銀行の果敢な利上げが行われているからです。
しかし、インフレはまだまだ頭打ちする兆しがありません。FRBも今後も利上げを行い、高い金利の状態を継続すると宣言しています。
2023年2月6日に発表された雇用統計では、強い雇用が発表され、まだまだ予断を許さない状況であり、金利はどこまで上がっていくのかわかりません。
アメリカ労働省が3日発表した1月の雇用統計によりますと、農業分野以外の就業者は前の月と比べて51万7000人増えました。
上げ幅は19万人程度を見込んでいた市場の予想を大きく上回り、「レジャー・接客」や「医療関連」など幅広い分野で増加しました。
また、失業率は前の月より0.1ポイント低下し3.4%になりました。
これは1969年5月以来、53年8か月ぶりの低い水準で、人手不足が続いていることが改めて示されました。
まだまだ下落相場の入り口です。ここから米国リートに投資するのは控えた方が賢明でしょう。
そして、商業用不動産は今後の見通しが悪く次の金融危機の震源地と目されています。
商業用不動産市場は、昨年来の金利上昇や、オフィス空室率の上昇に加えて、3月以降の金融不安に伴う銀行の貸し渋りというトリプルパンチに見舞われている。これらはいずれもすぐに解消するとは思えないことが市場の懸念を生んでいる。
参照:Pictet
ここから暴落が懸念される米国不動産んあえて資金を投じる必要性はないでしょう。
為替ヘッジなしのBコースは危ない?
さらに為替ヘッジなしのBコースは危険です。2023年5月末時点、ドル円は140円になっています。
これは米国で強烈なインフレが発生して日米の金利差が拡大していることに起因しています。
以下は米国10年債金利の推移です。既に長期金利は天井をうっており、今後景気後退が発生すると金利は低下していきます。
すると、日米の金利差は縮小して為替もドル円は円高方向に修正していきます。
為替ヘッジがついてないBコースは不動産の下落に加えて為替の下落が被弾され厳しい展開となることが想定されます。
掲示板での口コミ評判
口コミ
ヨコヨコが続くつまらんね!
ここもゴルディロックスだし
景気先行指数は、景気後退の兆候を示し続けているが
(現在過去のリセッション入りと同程度)
まだ逆イールドなので来ないはず
逆に利上げ停止で上昇すると思う。
口コミ
3000円切ったら売ると予定していたので、今回全て手放しました。
売却益も出てますので、ここは約3年間でしたが大変儲けさせてもらいました。
コロナ初期のような暴落はもうないとおもうので、再度インすることはないとは思いますが、大変お世話になりました。
口コミ
2023年には2,000円割るよ。
口コミ
3000切ってしまったか・・・
まぁ一気に円高進んだしこれはしゃーない
口コミ
2011年からずっと長い事持ち続けてなんとかトータルプラスになってます。最近は特配続きでしたがなんとか分配してくれて安心感ありました。ですがそろそろ3,000円台が厳しそうなので売注文だしました。なんだか長年毎月通帳に安定して入金されてたので手放すのは寂しい気もしますけどね…
最近売却したという報告をする人が多いです。
かなり玄人の方々が投資をしていると思われますし、その人たちが離れていっています。
まとめ
フィデリティUSリートファンドについてまとめてきました。すでに分配型の投信は価値がないと散々言ってきましたが、そもそも不動産セクターはこれから逆風になります。
金融引き締めで不動産セクターが活躍することはまずあり得ません。すでに不動産バブルは終わり、金利は上がり、人々、企業はお金が借りれず不動産は買えません。
不動産取引が減退することにより不動産価格が下がり、家賃収入は下がり、不動産セクターは真冬に突入です。金融引き締め時期に不動産セクターは触らないようにしましょう。
今後不況が到来し、不動産価格がゴミのような価格まで下がったタイミングが、フィデリティUSリートファンドの買い場になります。
ただ、このようにタイミングを見計らって投資するのは非常に難しく初心者は手を出さない方がよいでしょう。