温暖化問題が取り上げられて久しいですが、2015年のパリ協定を契機として機運が高まっています。
特に最近では今まで消極的だった米国と中国も積極的に脱炭素に乗り出すことを表明して本格的に世界で一致団結して温暖化問題に立ち向かうという雰囲気が作られています。
当サイトでも以前、クリーンエネルギーや動力として注目されている水素関連銘柄に投資する投信を分析してきました。
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本日はより広範に脱炭素に取り組む日本企業に投資する投信「脱炭素ジャパン」を取り上げたいと思います。
今回は以下のポイントを中心にお伝えしていきます。
- 脱炭素のトレンドの経過
- 脱炭素ジャパンの特徴
- 運用実績と今後の見通し
脱炭素社会に向けた動向
まずは直近の脱炭素に向けたトレンドについてみていきたいと思います。別の言い方だとカーボンニュートラルともいったりしますね。
主要国の温室効果ガス排出量と削減目標
以下は主要国の温室効果ガス排出量と削減目標をグラフ化したものです。
現状では中国が最大の温室効果ガス排出国となっています。圧倒的ですね。中国と米国の二カ国で合計40%を占めています。
主要国や地域の削減目標は以下となっています。
30年中間目標 | 50年目標 | 60年目標 | |
中国 | ピークアウト | - | 実質ゼロ |
米国 | 05年比 50〜52% | 実質ゼロ | - |
EU | 90年比 55%減 | 実質ゼロ | - |
日本 | 13年度比 46%減 | 実質ゼロ | - |
脱炭素社会への投資機会と拡大が想定される市場
脱炭素に向けては様々な事業での投資が必要となります。テクノロジーで解決する必要があるので技術開発と普及に多額の投資が必要ということですね。
現状から脱炭素社会を2050年に実現するためには1.35京円が必要になると想定されています。
特に期待される分野として水素エネルギーや電気自動車などがあげられています。
日本は技術的に環境先進国
環境先進国といえば欧州のイメージがあるかと思います。
しかし、「エネルギー関連産業」「輸送・製造関連産業」「家庭・オフィス関連産業」で日本は非常に高いプレゼンスを発揮しています。
以下は各分野での特許競争力の順位ですが、殆どの分野で日本は上位にいます。
エネルギー関連産業 | 輸送・製造関連産業 | 家庭・オフィス関連産業 | ||||||||
洋上風力 | 燃料 アンモニア |
水素 | 自動車 蓄電池 |
半導体 情報通信 |
船舶 | 食料 農林水産 |
カーボン リサイクル |
住宅 建築物 次世代 太陽光 |
ライフスタイル | |
第1位 | 中国 | 米国 | 日本 | 日本 | 日本 | 韓国 | 日本 | 中国 | 中国 | 中国 |
第2位 | 日本 | 中国 | 中国 | 中国 | 米国 | 中国 | 米国 | 米国 | 日本 | 米国 |
第3位 | 米国 | 日本 | 米国 | 米国 | 中国 | 日本 | 韓国 | 日本 | 米国 | 日本 |
第4位 | ドイツ | ドイツ | 韓国 | 韓国 | 韓国 | 米国 | 中国 | 韓国 | 韓国 | フランス |
第5位 | 韓国 | 英国 | ドイツ | ドイツ | 台湾 | ドイツ | フランス | フランス | ドイツ | ドイツ |
日本企業も脱炭素化への取り組みには非常に積極的で、気候変動関連の情報開示等を行う枠組みであるTFCDの賛同企業は日本が世界1位となっています。
脱炭素ジャパンの特徴とは?
では脱炭素ジャパンの特徴について見ていきましょう。
投資対象は脱炭素社会の実現に貢献する企業
投資対象は脱炭素社会の実現に貢献する企業としています。
脱炭素関連ビジネス展開する企業 | 脱炭素のための取り組みを行う企業 |
✔︎脱炭素社会の実現をビジネス機会として捉えている企業 ✔︎環境関連技術等へのニーズの高まりにより売り上げや利益の伸びが期待される企業 |
✔︎脱炭素社会の実現に向け、カーボンニュートラル宣言を行うなど自社の直接的な貢献を目指す企業 ✔︎温室効果ガス排出量の削減等により、企業評価の向上が期待される企業 |
ポートフォリオの構築プロセスは以下となります。主にESGスコアを付与している銘柄の中から脱炭素への貢献が期待される投資候補銘柄を選定しています。
ESGスコアに関しては以下となります。
企業のESG(環境・社会・企業統治)への取り組み状況を示すスコアのこと。主に、投資家などが投資対象を評価する時に参考にする指標である。環境へのインパクトなどを評価する環境スコア、働き方や社会との調和などを評価する社会スコア、組織のガバナンス(企業統治)や法令順守などを評価するガバナンススコアで構成されるとの理解が一般的だが、明確に決められた定義は存在しない。
参照:日経ESG
業種別配分・構成上位銘柄
2023年6月末時点の業種別配分は以下です。
NTTや関西電力、九州電力といったインフラ企業が中心に構成されています。
ちなみに過去からのポートフォリオの変化は以下となっています。上位3つは変わらず他は異動が起きていますね。
No. | 2023年6月末 | 2023年3月末 | 2022年10月末 |
1 | 日本電信電話 | 東レ | 東レ |
2 | 関西電力 | 日本電信電話 | 日立製作所 |
3 | 東レ | 日立製作所 | 日本電信電話 |
4 | 九州電力 | 信越化学工業 | 大和工業 |
5 | 三菱ケミカルグループ | 関西電力 | 信越化学工業 |
6 | 信越化学工業 | 三菱ケミカルグループ | 本田技研工業 |
7 | 日立製作所 | リンナイ | 豊田通商 |
8 | 旭化成 | 九州電力 | 三菱ケミカル |
9 | 豊田通商 | 豊田通商 | 豊田自動織機 |
10 | 花王 | 旭化成 | 日本電産 |
手数料
手数料は以下となります。
購入手数料:3.3%
信託手数料:年率1.584%
脱炭素ジャパンの運用実績
脱炭素の運用実績は以下となります。基準価額は11,265円となっています。
過去1.5年で+1.44%となっています。日経平均やTOPIXと比較すると以下となります。
日経平均やTOPIXよりも低い成績となっており、アクティブ投信としては不甲斐ない結果となっています。
青:脱炭素ジャパン
赤:日経平均
緑:TOPIX
掲示板での口コミや評判からは苛立ちが見える
掲示板での口コミや評判は以下となります。煮え切らない基準価額の推移への苛立ちが多くなっています。
口コミ①
伸びないので、切りました(損切です)
口コミ②
ここ伸びないねえ ジャパンは見切り時?
口コミ③
突き抜けないなあ 日本の各企業にとって脱炭素が至上命題になってるけど
下請け、孫請け中小などに無理強いはしないでね
脱炭素は理想だけど、それだけじゃない
口コミ④
0って何だ?
口コミ⑤
思ったより伸びないから迷う。
口コミ⑥
名前だけはカッコいいけど、ファンドとしては零点。ホントに腹立たしい限りです。いつになったら期待に応えてくれるのやら?
かなり怒りの声が聞こえてきますね。
今後の見通しは不透明感が強い
重要なのは今後の見通しです。まず株式市場全体の見通しとして2023年は景気後退によって厳しい環境になることが見込まれます。
世界中でインフレが発生し、人々の財布が限界を迎え企業収益の減退により既に米国企業ではリストララッシュが発生しています。
世界的な景気後退におちいると通常の株式市場は大きく下落するので基調として厳しい環境が想定されます。
では脱炭素関連銘柄はどうなのかというと正直不透明感があって難しいです。テーマ型の投信は盛り上がる時は大きく株価は上昇しますが、一旦ブームが終わると暴落します。
いつくるか分からないテーマ型の投信は上昇し始めた時に数ヶ月から1年の期間で上昇局面だけを狙って投資するのが合理的です。
最悪10年単位で停滞することもありますからね。脱炭素ジャパンに投資するタイミングは今ではないでしょう。